自作小説

□天国に逝くため……第二章
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 プロローグ。

死んだ……。
首吊り自殺……苦しくて苦しくて、暴れたけれど苦しみからは解放されない。
息が出来ない辛さを初めて知った。
生きていたいって、死にたくないって、初めて思った。
でもすべて手遅れだった。
だってこれはわたしが進んで行った愚考。
自分の首を頑丈な縄で吊ると言う自殺行為。
視界が暗くなっていく……何も見えなくなっていく……目から、口から、鼻から…わたしの身体の穴という穴から流れだす様々なモノ……。
目から涙、口から涎と嘔吐物、鼻から鼻水。
下半身からは糞尿を垂れ流すこの姿…誰にも見てほしくない……恥ずかしいから、見てほしくない……。
でも、見られるんだろうな……このだらしなく開いた口も、眼球が半分飛び出したまま見開かれた目も、糞尿を垂れ流した所為で、ぐしょぐしょになった下半身も……見られるんだろうな……。
恥ずかしいなぁ…わたしだって女の子だから、糞尿を垂れ流してる姿は見られたくない。
でももういいや、関係ない…だって死ぬんだもん。

『…死なねーよ……』
あれ? 誰かがわたしに話し掛けて……きた?

『テメーは死なねーよ。俺の名はガブリエル。神様からのメッセージだ。聞きやがれ』
知らない、神様なんて知らない…誰かは知らないけど……わたしに話し掛けてこないで!

『うるせーよ、テメーに拒否権はねぇ、自殺した奴がとやかく言うな。……テメーは選ばれたんだよ。この俺…ガブリエルにな』
ガブリエルの手がわたしの首に伸びる。
ぐいっと…ガブリエルはわたしの中に何かを押し込んでくる……。

『ほらよ、これでテメーは今から〈自殺者〉だ。〈守護者〉の名は《冥魔》……冥界の番犬がテメーを守護してくれんだ。これ以上の安全はねーだろ? 名前はえーと…確か、そうそう、《黒神明衣》(くろかみめい)だったな』
そう言うと、ガブリエルは姿を消した。
わたしは茫然と、死んでいるわたしを見上げ、生きているわたしを嫌悪した。
そして、隣に立つ……冥魔を呼び寄せ、その身体に身体を預ける。
――――

この日…。
わたし、黒神明衣は死んだ。
〈人間〉のわたしは死んで、〈自殺者〉わたしが生まれた。
黒神明衣、字《孤独のお飾り人形》
〈守護者〉冥魔。冥界の番犬ケルベロス。

それから八年後……。

わたしは今…真朱くんの抱き枕です。
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