修一
□夜中の勉強会
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「…おや、寝ずに待っててくれたんですか??」
「うん。そろそろかな〜って思って降りてきちゃったっ☆」
「今日は遅くなるから、先に寝ていてくださいと言っておいたのに…。」
「なんか、…待ってたかったんだもん。」
そう言うと修一お兄ちゃんは、
それは嬉しいですね。と微笑んで、ネクタイを緩めた。
わ…。この仕草かっこいい…。
「ところで、テスト勉強はどうですか??」
「えー、あー、うん…。まぁ、それなりに…。」
そんな曖昧な私の言葉を聞いて最初キョトンとしたお兄ちゃんは、その後ふっと苦笑した。
「どの科目です??」
「しいて言うなら…、数学…??」
「じゃあ、この後少し一緒に勉強しましょうか。」
そう言って、私の頭にポムっとお兄ちゃんの手が乗る。
「いいの??…疲れてない??」
見上げた私を見て、修一お兄ちゃんはどこか困ったような顔をして笑った。
「そうやってあなたは…。気遣ってもらえてるだけで充分ですよ。」
「えっと…、じゃあ、よろしくお願いします。」
そういって頭を下げると、
「はい。じゃあ、着替えてきますから待っていてください。」
と言って階段を上っていったのだった。
その背中を見送っていると、後ろから聞き慣れた声が届く。
「お前、修兄に勉強見てもらうのか??」
「うん、そう。」
「お前、覚悟しとけよ??修兄はあれでいて、意外にスパルタだからな。」
「え゛……。」
「“生徒はどんな子だってやれば出来るんです!”って熱血心持ってる分、厳しいとこあるぜ??
その点は、雅季のほうが融通きくかもしんねー…。
まぁ、後の祭りだな!」
そう言って、雅弥くんはニヤっと笑った。
「ど、どうしよう…。私、今回の数学、本気で“出直して来い”レベルかも…。」
「まぁ大丈夫だろ〜??
修兄は期待する分、とことん面倒見てくれるって、きっと。
修兄は見るなら途中で見捨てたりはしねーし、ぜってー悪い結果は取らねーよ、おそらく。」
「いちいち語尾に不安定な言葉がついてるのが不吉なんだけど…。」
「ま、ガンバレヨ〜!」
そう言って後ろ手を振りながら
どこか楽しそうに雅弥くんは去って行った…。
だだだ大丈夫なんだろーか、私!!!
**さん…、実は可哀想な子だったんですね…。とか思われないかな…。
――― その頃2階では。
「おや、雅弥も起きてたんですか??」
「あー、まぁ…。」
「どうですか??テスト勉強は。」
「えー、あー、うん…。まぁ、それなりに…、ぼちぼちと…。」
「数学の先生から、最近の授業中の居眠りを聞いていますよ??」
「え゛…。」
「今回のテストが悪いと、次の大会に出られないんでしょう??」
「いや、それは…。」
「**さんの数学も今からですから、雅弥も一緒に勉強しましょう?」
どこか不敵に見えたその笑顔に、「…お、おぉ…。」と答えるしか雅弥に選択肢は残されていなかったのだった…。
結局…。
その後、修一の部屋で一緒に勉強した2人だったが、
途中で雅弥が机に突っ伏して夢の世界に旅立ったため
修一は**に付きっ切りの勉強会になったのでした。
―――― テスト返却日。
「なぁ…、お前どうだった??」
「…………ミラクルが出た。」
「おれも……。」
ちなみに2人のテスト結果は
学年の平均点が悪い中でも、数学は上位に位置し
長男の面倒見の良さに感嘆するのでした。
【fin.】
08'09.12 KAHIME.