修一
□ホントは構ってほしかったの…。
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「修ちゃん、ハンドクリームいらない…??」
「??貰えるなら、いただきますが…??」
土曜日。
修ちゃんの部屋で本を読んでいた私は、同じく本を手にソファーに座っていた彼に声を掛けた。
組まれた長い足を投げ出して、肘掛に右腕を立てて本を読む好きな人の姿。
本から視線を私にずらした修ちゃんの両手を、私はハンドクリームのついた手で握ってみた。
「だぁー…♪」
付きすぎたクリームを、そのまま彼の手に擦り付ける。
「…って、すごい渡し方だな…。」
キョトンとした顔でその様子を見ていた修ちゃんは、その仕種にふっと優しく笑った。
担任である修一先生の下を離れてから2年。
その日から、私達の関係から教師と生徒という言葉は消えた。
教え子であることは違いないけれど…。
それからなった学年主任。
定年までいる先生が多い中で、27歳での就任は結構な速さでの出世だと思う。
修ちゃんの実力が評価されるのは純粋に嬉しいけれど、それに比例して忙しくなるのは、ちょっとだけ寂しい…。
休みの日も、教育関連が記載されている雑誌を読んでいる修ちゃんの邪魔は出来なくて…、
それでも一緒にいたくて、私も本を持ち込んでソファーに座ってた。
「それはどういった本なんですか??」
「え……っ??」
「**がいま読んでいる本…。」
こうやって、例え仕事をしてる時でも時々気にかけて話を振ってくれる修ちゃんだけれど、ちょっと今回は間が悪い…。
「あ…、えっと……。れ、恋愛の本…かな……??」
「どういった関係??」
「えっと………、ど、どういった関係なんだろう………。」
慌ててパララララとページを遡る私を見て、修ちゃんは珍しく声を上げて笑い出した。
「もしかして…、読んでなかったのか…??」
「あ……ぅ……///きょ、今日だけ…っ!今日だけちょっと考え事してたの…っ!」
本を開いたまま修ちゃんのことを考えてて、内容が全く頭に入って来なかったとは、何となく、こう……言いづらい…///
気恥ずかしさで、慌てふためく私を修ちゃんは優しく微笑んで見てた。
安心する……。
体中の細胞が、ほっ…と呼吸して、肩の力が抜けちゃう感じ…。
こうゆう時に、幸せだなぁ…って思う…。