雅弥

□ふたりで前を向きながら
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「あ、**ちゃん。」


「お…!来てたのか。」


「うん。さっき来たとこ。」





今日は雅弥くんの練習試合。



試合開始時間よりだいぶ早めに行くと、
ちょうどアップを終えて、水飲み場で頭から水を被っている巧くんと雅弥くんが気づいてくれた。










《ふたりで前を向きながら》












水も滴るとは、主には女性を形容する言葉かもしれないけれど、
無造作に洗った顔を拭いたタオルを首にかける雅弥くんには、
この表現がピッタリなんじゃないかと思う…。



ポタポタと、髪から滴り落ちる水滴に太陽の光が反射して
ザァ・・・と揺れる木々の陰が時折その顔にかかる。




思わずその絵になる光景に見とれていると、
バツが悪くなったのか、少しふて腐れた声がかかった。


「な……なんだよ…。」


「あー……、いやいや…。カッコイイなぁと思って……。」


「ば…っ///おま、巧がいるとこで、んなこと言うな…っ!」


「え〜…??だって2人きりの時は、なんだかんだで結構愛を囁いてくれるじゃ…」


「だぁ――――っ/////」


「わーっ!いたいいたいー!」



ありのままを正直に話したら、慌てた雅弥くんのエルボーが飛んできた。


だいぶ高くなった彼の身長から首に腕をまわされ、
私のおデコは彼の鍛えられた胸板にあたる。



雅弥くんは世間一般で言う、成長期の時期を越えてもまだ身長が伸び続けた。



付き合い始めのころは、肩に当たるくらいだったのになぁ…。




懐かしさと好きな人の体温に、されるがままになっていると、


「いつまでたっても熱いよね、おふたりさん。」


と、少し離れた位置にいた巧くんが笑いながら揶揄をいれてくる。




「うん。らぁぶらぶ!巧くんも早く彼女出来るといいのにね♪」


ホールドされたまま笑って返した私に、
今度は巧くんまで飛んできて、肘で私の頭をグリグリと攻撃する。



セットしてきた髪の毛は、あっと言う間に崩れたけれど
久しぶりに3人で声を出して笑ったような気がして、
それが妙に心地よかった。
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