雅弥
□学問の雅季様
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「ここは出るだろ、遺伝子組み換えの計算式!」
「雅弥くん…、それ前回の期末の範囲…。」
「げ……っ!え、てか俺、勉強範囲ずれてるかっ??!!」
自分の開いているページと、テストの範囲表を慌てて照らし合わせる雅弥くん。
2人は今、今年初めての危機を乗り越えようとしていた。
《学問の雅季様》
学年末テスト前夜の、闇も深まるこの時間。
すでに寝静まった西園寺家の屋敷の中で、まだ光の灯っている部屋が一室。
娯楽の誘惑から離れた、居間と呼ぶにはあまりにも豪華なその空間に、
必要なもののみ持ち寄って勉強に励む雅弥くんと**ちゃん。
明日がテスト当日でこの状況とあっては、すでにこれは「勉強」と言うより「一夜漬け」に近かったが…。
「あり、をり、はべり、いそべやき…。
あり、をり、はべり、いそべやき…。おっし…!次…。」
「………???
ねぇ…、なんか今の変じゃなかった…??」
「変??……どこが??」
「や、わかんないけども…。
もう1回言って…??」
「あり、をり、はべり、いそべやき…??」
「いや、なにゆえ海苔巻き……???」
「は…??
………うおっ!違うじゃねーかよ…っ!
いそ…、いまそかり……??」
「当日もそっちで覚えてそうだよね…。」
「だぁぁぁぁ!!!
やっぱ俺らだけじゃ無理だろー…っ!!!!!」
NO!!!!!
と言うように、雅弥くんは頭を抱えて天井に絶叫した…。
御堂さんが最後に入れてくれたコーヒーも、もう随分と冷たくなっている…。
「でももう3時だし……今更誰か起こせるわけないじゃん…。」
「ヒーラギ…、あいつ無理かなぁ??」
「ふたりで教科書とノート抱えて、ごめんくださーい…って言えるような雰囲気でもない気がするんだけど………。」
「…………だよな…。」
というか、いくらなんでも常識の問題だよね……。
雅弥くんは、あ〜……。と大きく伸びをしながら、ゆっくりと肩をまわした。
「まぁでも、やるしかないよな…。」
「今回の結果で、春の大会出れるかどうか決まるんだっけ…??」
「ぉう!
キャプテンが出れないんじゃ、面子が立たねーからな…!ぜってークリアして大会行くぜっ!!!」
「………まぁ、“キャプテンが赤点で大会に出て来れませんでしたー…”ってのは、本っ気で恥ずかしいよね…。」
「おっし!とにかく賭けた山だけは越えるぞっ!」
「いえっさーっ☆」
「“明治時代、薬師寺東塔を見て、『凍れる音楽』と例え評したのは??”」
「ザビエル!!!」
「…せめて、明治時代の人挙げない……??」
こうして2人の夜は更けていくのだった…。