御堂要
□写真部の暗躍
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「今年の生徒会は、募金活動を行います。」
文化祭当日。
舞台で、各部活動が出し物の宣伝をする中、
生徒会長である御堂要が発した言葉に
会場の期待と興奮は、不完全燃焼で終わった。
「なんか…、期待してたのと、違うね…??」
「うん…。今年の生徒会メンバーは、そう目立つことは好きじゃないとは思ったけど…。」
「募金て……。」
毎年、一般公開される西園寺学院の文化祭は、一風変わった趣向で開催される。
特殊メイクを施した、本格ホラー屋敷だったり
プロが使用する機材を駆使して制作した、映画を上演したり
パティシエ指導の下、作ったスイーツを振舞ったカフェ… などなど。
そこに輪をかけて、去年の生徒会が行ったイベントは、
証明、機材、衣装、ステージが揃った野外特設ライブだったのだ。
それが今年は 募金
壇上で、一部ユニセフに寄与します。どうか協力してくださいね。と
変わらぬ笑顔の御堂さんが締め、
生徒達は「はーい…。」とまばらな返答をした。
「でも、やっぱ行くよね?」
「そりゃ…。もしかしたら、生徒会の人達も総出でいてくれるかもしれないし。」
「や…、一応募金は尊いのよ、うん…。」
それぞれが思ったことを口に、生徒達が募金会場に赴くと、
きゃぁあぁあぁぁぁあっ!!!!
黄色い声とともに、ある一角を中心に
大きな人だかりが出来ていた。
そこにあった光景とは……。
「はい、押さないでください☆在庫はまだありますから。」
「お買い上げありがとうございました。はい、お次の方どうぞ。」
「6番から11番を3枚ずつですね☆少々お待ちください♪」
“あなたの1枚をまごころに”と描かれたバナーの下に、
『写真1枚300円』と書かれた張り紙があった。
「西園寺くんの剣道着姿買っちゃったっ♪絶対机に飾るんだからっ////」
「私は生徒手帳に、御堂さんの私服姿入れるっ////」
「それでもやっぱり…っ//////」
『永久保存版は、生徒会限定の“ハロウィン海賊”よねーっ!!!!!』
催された企画の内容とは、
生徒会メンバーのオフショットを販売するという形で行われ、
売上金を募金として寄付するというスタンスだった。
この年の生徒会メンバーは、
会長をはじめ、副会長、書記、会計と
文武・容姿・人柄において、カリスマ性を伴う男女の人員で構成されており、
写真の客層は、学年・性別を問わず、
売り上げ金は、全ての催し物の中で
桁が1つ多い金額となったのだった。
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「また全種類に50枚ずつ追加がかかったぞーっ!!!」
「だぁーっ!!!なんて忙しさだっ!!!」
「生徒会の奴等も、業者呼ぶなりしろよなーっ!!!」
赤暗い光の暗室では、写真部が生徒会から依頼された現像作業をしていた。
「まぁでも、現像代は業者に払う額と同額くれるんじゃん。」
「まぁな…。このまま行くと、俺達コンクールにも出品できなかったしな…。」
「部費が入らねーんだから、こうして依頼が入るだけ有り難いよな…。」
「生徒会の出し物としても成功だし、社会貢献にもなるし、ホント無駄のない仕組みだよな〜…。写真部も安泰だし。」
「いや…。そこまで考えた上での『募金』なら、そーとー頭の切れる奴の発案だぜ??それ…。」
そんな会話に、ふと思い出したように部員が口を開いた。
「そういえば俺、部費のことで御堂に話したことある…。」
「なんて?」
「いや、俺らまだコンクールで実績残せてないし
運動部と違って注目される部活でもないから、学校に交渉しても部費が降りないって…。
このまま行くと、写真撮るフィルムや、現像する薬品も買えなくなるから、
次のコンクールに出展できないかもしれない…って。」
「そしたら、御堂なんて…??」
「“わかった。こっちで何とかしてやるから安心しろ。”って…。」
「…………。」
この日を境に、
写真部員がひそかに尊敬と信頼の念を送るようになったのを、
御堂要は本人は気づいていない…。
【fin.】
08'10.04 KAHIME.