御堂要

□どうか幸せに
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時は、明治…。





私が愛したのは…、

あなたでした…







私が想いを寄せたのは、
私より3つ年上の要様


私の奉公先の若旦那さま…







人の心に語りかけるような
その落ち着いた、柔らかい話し方



時折お見せになる、
涙が出るような暖かい微笑み



お茶をお持ちすると、
書物から目を上げられ

ほ…っと息がつけるような表情で
私に安らぎを与えてくれた





御堂家に仕えて4年目


私が17のとき、
私たちは相思相愛になった…





2人で秋のお庭をゆっくり歩いた


雨が降る日は、要様が傘をさして


雪の降る日は、体を寄り添い、
部屋から白くなる庭を…。









最後にあなたが私に残した言葉…




すまない…


あなたを守ることができなかった…








あなたは
もうあとに引けなくなった御堂家を守るため


とあるご令嬢をお迎えになった…






奉公に出てきた私には
もう帰る場所など
残されていない…


13の時から仕えてきた私は、
この生き方しか知らなかった…










要様とは、それから話すことはなくなった


家の存続のためとはいえ
迎えられた幼い奥方様を悲しませるような
そんなことはしない…




誠実な人なのだ

どこまでも…









どうか…

どうかお幸せに……











愛する人を忘れて生きることより、


愛する人のそばで生きることを
生き方に選んだ私…



これが私の生き様






この生を全うするとき、
私は御堂家の敷地に

この身を眠らせましょう…




そして、
いつの日か


いつの時代か



今度こそ…
あなたとともに生きていきたい






その時がくるまで、


私は何度でも何度でも


この世に生まれ、


あなたを探しにゆきましょう



そして、いつか出会えたその日には



私を見つけてくれますか…??













「自己紹介が遅れましたが、

私、西園寺家の執事を務めさせていただいております
御堂要でございます」














そして、

今度は




ともに生きてくれますか…??

















【fin.】

08'10.08   KAHIME.


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