松田 隆実:第1章

□大人になるまでは
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なんか少し…、いや、結構かなりドキドキする…。


付き合い始めてから、初めて私と松田さんのオフが重なった日曜日。


私は1人、松田さんのマンションの扉の前で息を整えた。



……好きな人の家の扉の前で、しみじみと幸せをかみ締めたりする女の子って
ちょっと奇異に映ったりしてるんだろうなぁ〜なんて思いながら…。









《大人になるまでは》











一通り幸せに浸った後に押したインターフォン。


スピーカー越しに彼の声が聞こえて、玄関を開けてくれるまでのしばらくの時間。
こっちに近づいてくる廊下の足音に比例して、私の心音も次第に大きくなった。





「いらっしゃい」


ガチャっと開いたドアの音に、はっとして勢いよく前を向く。




う、わぁぁあぁあぁぁ///
ちちちかい…っ!!!




普段と違って、サンダルを引っ掛けてドアを開けているような姿勢だったからか、いつもより顔が低い位置にある。


…私が背伸びをすれば、届く、かな……。



なぜかその先の光景が頭に浮かんで、顔がボンっと音を立てたように熱くなった。



わわわわたし、何を考えてるのっ///





松田さんは大して気に留める素振りもなく、サンダルにちゃんと足を納めて、ドアの端に寄った。


いつもの距離に離れていく顔。



「迷わんかった??」


「あ……いえ、駅から近かったし…。」


「そか、なら良かったわ。」


そう言って大好きな笑顔が降ってくる。




普段と違う、ラフな格好。

いつもかけてるプレートのネックレスに、柔らかそうな白のニット。

その白に引き立つような、艶やかな黒髪。



「とりあえず入り??」


そう言って自然に中に促して、ゆっくりとドアを閉める松田さん。


連絡したあと、迎えに行けばよかったな思て…。と話しながら私の前を歩くその後ろ姿から、
ほのかに香るタバコの匂いと、触れてもいないのに感じる松田さんのぬくもり…。


私はその背中を見つつ、買ってきた夕食の材料が入ったビニール袋を思わずギュッと握った。









結局、いつもと変わらない松田さんの仕種に緊張も自然とほぐれていって、
白く広がる絨毯に、ラフに座る松田さんの向かい隣にちょこんと座って、普段と変わらない会話。


変わらないというよりも、普段よりゆったりと落ち着いてる感じ…。


それでも時折見せる、柔らかい表情にドキンとしつつ、時間はゆっくり過ぎていった。










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