裕次お兄ちゃんのコレクションシリーズ

□修一お兄ちゃん編
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「修一おにいちゃんのはあったりする〜??」


「あ〜、兄さんのはさすがに無理だったな。
でもまぁ、兄さんは出来てもカチューシャだよね☆」


「裕次お兄ちゃん…、それ見たくない…。」










〜修一編〜












「あ、でも…。しいて言えば女装は1回あったかな…??」


「じょ、女装!!??
あの修一お兄ちゃんがっ!!??」


「いや、女装っていうか、なんて言うか〜…。」


「なんて言うかっ??」


「……老婆…??」


「………は??」










「ほ、本当だ…。正真正銘の老婆役だ…。」


「まぁ、正確には老婆に変した魔女なんだけどね…。」


「いや、それにしたって、性別変わってるじゃん…。
なにゆえお兄ちゃんがこんな役に…。」


「それが話すと長くなるんだけどね〜…。」












――――――――――――


「誰かー??魔女の役やってくれる人いない〜??この役だけ候補者がいないんだけどー。」


「魔女はちょっとね…。」


「悪役だし…。」


そんな声が出てきて、最後の最後でなかなか決まらない。


「女子が“白雪姫”がいいって言ったんだろー??誰かやれって〜。」


「なに言ってんのよ。高3の青春真っ只中なこの時期に、悪女なんて演じたらイメージ悪くなるでしょ!」


「…だからみんなで“おはロック”踊ろうって言ったんじゃんー…。」



そんな、てんやわんやなその言い合いに、終止符を打ったのはこの一言だった。


「やる人いないなら、僕がやろうか??」



「西園寺くんっ!!!いいのっ??」


「誰かやらないと困るんでしょう??」


「キャー♪西園寺くんの魔女役、確かに見てみたいっ!」


「普段の西園寺くんからは見られない一面が見れるなんて〜☆」


と女子達は黄色い悲鳴を上げる。




「いや、それなら自分が!」


と立ち上がる御堂さんに、御堂くんの役はすでに決まってるから。と
即却下されたのはそれからまもなくだった。










ブザーが鳴り響き、会場は暗闇に包まれる。


そこに現れる巨大な瓶と、黒装束の人がひとり。
何やらブツクサ言いながら、瓶の中をかき混ぜ始める。


「あぁ…♪西園寺くんが、黒魔術してる…///」


「あの爽やかな西園寺くんのこんな一面なんて、絶対こうゆうとこでしか見られないよね…っ///」


「あ…、含み笑い…////」


舞台裏では女子達が、そのギャップに見入り、
男子は悲痛な面持ちで、そっと彼を見守っていた。






「お嬢さん…、これはとても美味しい林檎ですよ。おひとついかがですか??」


「は…はい…///いただきましゅ…///」





「あぁ!またポーっとなってる…っ!!」


「や、無理もないでしょ…。」


「あの笑顔で迫られちゃね〜…。」






結局劇は、お姫様を助けるべく現れた王子様が
帽子で2人の間をさえぎり、
長いキスシーンで会場は黄色い悲鳴で包まれたのだった。


ちなみに、このシーンの白雪姫役だけは、
回りの女子からの反感もあり、
男子生徒が姫に扮したのでした。






―― そして帽子の中では


「なぁ、御堂…。
なんで男同士でこんな場面を演じなきゃならんのだろうな…??」


チョロチョロ涙を流す白雪姫に、だよな…。と王子御堂は軽いため息を吐いたのでした…。





劇も無事フィナーレを迎え、小人達が祝福するその舞台では、通常と1つ異なる場面が…。


それは、彼の人柄なのか、
王子と姫の間で、改心する魔女の姿が脚本に組み込まれていたことでした。









――――――――――――


「そっかー…。まぁ御堂さんは王子役で良かったよね??」


「ん〜…。でも王子役の衣装、かぼちゃパンツに白タイツだったよ…??」


「一種の拷問……??」


「何かの罰ゲームだと思うよね、普通…。」



それからアルバムを数枚捲ると1枚の集合写真に辿り着いた。


「それにしても、この劇の衣装すごいよね〜。よくこんなにリアルに再現出来るね〜。」


「あぁ、みゆうちゃんて子が作ったって言ってた。」


「ひとりでっ!!??」


「うん。修一兄さんが“本当によくやってる”って感心してたから。」


「確かに……、並大抵じゃないよね〜…。」






「さて、そろそろお茶でも飲みに行く??」


「うん!美味しいお菓子も食べたい♪」


「そういえば要さんが、おいしいクッキーがあるって言ってたよ??」


「やったーっ☆」



そう言って
触れたことのなかった兄弟達の過去を垣間見た**は
2人で書斎を後にしたのでした。










【次回番外編へ】

08'09.18   KAHIME.


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