裕次お兄ちゃんのコレクションシリーズ
□兄・修一、語る
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「そいえば修一お兄ちゃん。」
「なんですか??」
「こないだ雅弥くんが恥ずかしがって話すの辞めた、
4歳のころの話って??」
「あぁ。」
ふっと笑った修一お兄ちゃんは、雅弥くんが近くにいないのを確認して、
少し声を潜めた。
《兄・修一、語る》
「雅弥は小さい頃、サッカー選手のほかに、ウルトラマンにも憧れてましてね。」
「おぉ…☆なんて純粋な…☆」
「家の中でも変身ごっこや、ポーズの練習…。
まぁ、小さい子がみんなするような真似を雅弥もしていたわけです。」
「あ、私もお母さんのファンデーションでアッコちゃんやったー☆」
「…それが雅弥の場合は…、
何というのか、職業に「ウルトラマン」というものがあると本気で思っていた節があって…。」
「ほぅ…(汗)」
「珍しく家族全員で公園に行った時、
雅弥がブランコを漕ぎ出したかと思ったら、いきなり立ちだして…。」
「立ちだして??」
「飛んだんです。」
「…は??なんですと……??」
「“ブランコで立ったら危ないぞ〜??”と笑う父の言葉のすぐ後に、
“だってウルトラマンは空を飛べるんだぞ??”と…。」
「へ、へぇ…。」
「奇妙な掛け声が聞こえて、全員が振り返った時には、ブランコからすでにダイブしてました。」
「け、けがしなかった、の…??」
「腹部強打の全身擦り傷だらけで、
骨折していないのは奇跡でした…。」
「ホントに大事に至らなかったのはウルトラマン並みだね…。
なんにしても、飛んだのがブランコからで、良かったね??」
「本当に…。
まぁ、純真まっすぐな子供でしたからね。
裕次が雅弥をからかいたかったのも頷けます。」
そう言って、修一お兄ちゃんはどこか懐かしそうに笑った。
そんなこんなな西園寺家の思い出話。
私は一緒に経験してはこれなかったけど、
こうやって、誰かに話してもらうのも良いもんだな、と思ったのでした。
―――― そんなひとコマ
「だー!!いってぇーーーっ!!!
なんで飛べなかったんだ…??ウルトラマンは空飛べるんだぞ!!??」
いきなりな奇想天外な行動に、一同が声もでず呆然と見つめる中、
「は、そうか!変身をしなかったからかっ!」
閃いたように、再びブランコに向かって駆け出した雅弥くんを
両親と御堂さん、修一お兄ちゃんが慌てて止めに走ったのは 言うまでもない。
【おしまい】
08'09.30 KAHIME.