帰省シリーズ

□裕次の発案
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「**ちゃん??荷物なんて持って、どこ行くの??」


「あ、おばあちゃんのとこ☆
しばらく顔見てなかったから、里帰りなんてしようかな〜って。」



西園寺家での生活にも慣れてきて、
ひさしぶりに実家に顔を見せに行こうとした
土曜日のお昼。


裕次お兄ちゃんとのこの会話は、
考えてもいなかった方向へとまとめられたのだった。









〜裕次の発案〜











「そっか〜…。おばあさまも、寂しくしてるかもしれないもんね…。」


「でも、何だかんだで楽しそうだけどね☆
友達と旅行したり、老人会とかで。」


「うーん…。でもやっぱ、**ちゃんに会えないのは寂しいよ、きっと…。
久しぶりだから、ゆっくりして…って!」



「??…てって??」


「**ちゃんっ!それ、お兄ちゃんも行きたいっ!!!」




「……でえぇっ??!!なななんでっ??」


「だって、**ちゃんのおばあさまって事は、僕らにとってもおばあさまになったって事でしょっ??」


「まぁ…そりゃ…戸籍上は…??」


「だったら挨拶に行かなきゃでしょっ??」


「いやぁ〜…、そうなの…かなぁ…(汗)??」


「そうでしょうっ☆」


「……や、でもそれは、またの機会にしない…??
そもそもうち普通の民家なん」


「決まりーっ!
早速準備してくるから〜っ!」


「って、ちょっと、お兄ちゃん、私の話聞いてるっ??」



私の言葉を遮って
すでに走り出していた裕次お兄ちゃんの後姿を見て、
私は荷物片手に
小さなため息をついたのだった。









「ねぇ、おばあさまって、和菓子好きかな〜??」


「あぁ…、うん…、もぉなんでも…。」


「**さんはずっとそこで育ったんですか??」


「うん…、まぁ……。」


「そんなに気負うようなことでもないだろ〜??」


「電車とバスなら気負わなかったもんっ!」



思わず発した、私の悲壮の叫びに
兄弟はみんなキョトンという表情をしたのだった…。



あのあと結局、
兄弟全員で挨拶に行こうと言う話になり、
こうしてリムジンに乗り込み帰省する羽目になったのだが…、



あの心の底からの民家に、
このリムジンが止まる…。



一軒家が主流な町内会で
この高級車から降りる、モデル並みの容姿をしたお兄ちゃん達。



それはそれは絵になる光景だろう。




場違いなほどに…。




おぉ〜…。外車だぞー…。と、
わらわら集まってくるだろう近所の人達の姿が容易に想像できて、
とりあえず軽く頭を振って、想像するのをやめた。



「とにかくっ!
…悪いんだけど……、
少し離れた公園でとまって
そこから歩いて行くから、ご協力をっ!」



『は(う)(ぁ)(ー)い(…)(♪)』




わけの分からない返事を聞いて、
私は初めての帰省を試みるのだった。








【続く】

08'10.23   KAHIME.


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