帰省シリーズ
□雅弥の危機
1ページ/1ページ
「マサヤー!
一緒にお風呂入らないっ??」
「………はっ??」
兄弟そろって帰省してきた翌日の夕方。
遊びに来た親戚の子供と一緒に、
夕食は食べに行くかという話が出ていたその空間は
**の発した突拍子もない言葉で、物の見事に凍りついた。
〜雅弥の危機〜
「いいじゃない、お風呂くらい…。
普段めったに一緒に入れないんだから…。」
予期せぬ**の台詞に、
俺の脳は完全にフリーズした。
遊びに来た親戚の子供とテレビを見ていた瞬と雅季は、
後ろ手を突いて、こっちの様子を伺ってくる。
この2人は特に問題はねーけど…、
動作はそのまま、
飲んでいた湯飲み越しに
視線だけを、静かに俺に投げかけてくる修兄と、
ばあちゃんが咲かる話を聞いたまま固まっているバカ兄貴。
その表情は俺の立っている位置からは見えねーけど、
ジトっとした、言いようのない視線を感じる。
俺達が付き合うようになって、2週間。
修兄とバカ兄貴はどこか監視員のようだった。
……てか姑みたいな空気出すなよ…。
そんなこの状態に気がつきもせず、
**は容赦なしに言葉を続ける。
「だめ…??」
「いや、お前…」
「…たかだかお風呂でしょ??」
おわ…っ、どっかから殺気が飛んできた…。
正直怖くて、振り返れたもんじゃねぇ…。
「こんな時しか出来ないじゃんっ☆」
「ていうか」
「背中洗ってあげたりしたいじゃんっ!」
「そもそも俺達は!」
「小さいときしか出来ないでしょーっ??!!」
「まだキスしかしちゃいねぇーっ!!!
……って、はっ??」
「バカっ/////
私が言ってるのは、マサヤとお風呂っ!
中学年に上がったら、さすがに入れないでしょ??」
「おにいちゃん…、どうしたの…??」
ヒートアップした**の勢いと、
俺の足元に来る親戚の……
「あー…、なんだ…、こっちか…。」
昼ごろ遊びに来た、親戚の小学生。
公園で一緒に野球をやった時は、
「野球少年」だの、「ぼーず」だの言っていたから忘れてたけど、
こいつの名前も、マサヤだった。
俺とのことじゃないとわかって、
息を吹き返したように時間の流れ出す空間。
あれだけプレッシャーかけといて それかよ…。
「…てか、まどろっこしくねぇ??」
「え??なんで…??
“マサヤと…、雅弥くん”」
「“おにいちゃん”」
「俺だけかよ…。」
うっかり発した“まだ”という言葉が引っかかったのか、
それから家に帰ってあと。
至るところで目を光らせてくる修兄とバカ兄貴のおかげで、
ようやく2人だけで出かけられたのは
それから1ヵ月後のことだった。
【次回番外編へ】
08'11.02 KAHIME.