帰省シリーズ
□キミのために…
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「っだぁー…、わかんねー…!!!」
ここに来て結構な時間、
俺にしては、あーだこーだ考えた方だと思う。
それでも、どーにも決まんなくて、
俺は覗き込んでいたショーケースの中を見つつガシガシと頭を掻いた。
やっぱガラじゃねーよなぁ…。
今日、俺が初めて足を踏み入れたのは、
女の間では有名らしい、アクセサリーショップだった。
キミのために…
〜帰省シリーズからスピンオフ〜
ことの始まりは、こないだの帰省。
ちょうど兄弟一緒で帰った**のばあちゃん家に、翌日俺と同じ名前の親戚の子供が遊びに来た。
野球少年の“マサヤ”はクラブを持ってきていて、
一緒に公園へ行って、そいつとキャッチボールをしたりもした。
球威は小学生そのものだったけど、
一球一球、小さい体を使って投げてくるその姿に、**が弟のように思っているのが何となく分かった気がする。
前回の野球の大会で逆転負けして、
子供ながらに相当落ち込んだ時
**に励まされ、次こそは優勝すると約束して練習したんだと。
そして帰り際、自分の力で勝ち取った優勝メダルを**にやっててさ。
ちょうど付き合って2週間だった俺と**は
2人で出かけるどころか、恋人らしいこともしてなかったから…、
マサヤに対して素直に、かっこいいじゃねーか…と思ったんだ。
だけど、俺にはしばらく大会はねーし、
インターハイでのメダルも、仲間に連れてってもらったような形で取ったもんだしよー…。
そんなことを考えていたある日の部活終了時、
片づけをしているマネージャー達が、彼氏に指輪をもらったとしゃべっているのを聞いた。
…そうゆうのって、嬉しいもんか??と聞いた俺に、
女子特有のテンションで花を咲かせていたやつらは
店や流行まで、これでもかと言うほど話し出した。
勢いの止まんねー、その話の中で、
付き合いだしたら、その大体が2人で指輪を買うことと、
そうゆうのは、いわゆる少し高めのやつが置いてある、定番の店が2つあることだけは何とか頭に残った…。
で、午前中で部活が終わった今日、
ふらりと家を出て、その店に足を踏み入れた。
しばらくショーケースを覗き込んでたら、
その視界が少し暗くなって、
俺はもたげていた頭を上げた。
「どなたかへのプレゼントですか??」
見れば、1人の女店員が柔和な顔して佇んでいた。
要に少し似てるか…??
店員は俺の顔を見たあと、
ショーケースの鍵を開けた。
「彼女さんは、どんな感じの女性??」
「あ、あぁ…。
どんな感じって………どんなんだ…??」
「たとえば、可愛い系とか、大人っぽい系とか。」
「大人っぽくは……ねーな…。」
本人が聞いたら、怒るだろーなぁと思ったけど、
俺は正直に思った事を口にした。
その後も、イメージカラーだの年だの聞かれたあと、
店員は10種類のリングをディスプレイに並べた。
「この中なら、彼女さんに似合うのはどれかしら??」
「どれ…って……。」
絞られたやつは、シンプルがベースで、その中に装飾だったり文字や形が刻まれたりしてるやつだった。
あいつに似合うやつ…。
なんか…こう空気みたいにサラッとしてて、
ふわっとしてて…、なんかたまに女らしーってーか……て、俺なに考えてんだ…////
……メダルやれたら1番よかったんだよな〜…。
今度の練習試合でシュート…って、コートに立つ以上んなの当たり前だろ…。
ウイニングボールって言ってもなぁ〜…。
サッカーボールじゃー抱えるサイズだろ…。
てーか、あいつがボール抱えたら、ウイニングボールって言うより……
「スイカだろ、なんか……。」
「……え…??」
「あ…、あー…いや、なんでもねーっす…/////」
思わず口に出てたみてーで
店員も思わず意味が分からないと言ったような声を出した。
それから、ふっと笑ったかと思うと、
ゆっくり時間をかけて選んであげてねと残して、呼んでいる他の客のとこに向かった。
どーすっかなぁ…。
それからあいつを思い浮かべては指輪を手にとって見るけれど、
絞りきれなくて、さっきの店員が戻ってくるまで迷っていた。