頑張れヒーラギくん
□にらめっこしましょ
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頑張っているヒーラギくん。
実は子供が嫌いではないヒーラギくん。
彼は果たして園児から慕われる日がくるのだろーか…??!!
《にらめっこしましょ》
使ったものは、元の位置へ。
みんなが使う教室は、みんなでお掃除。
西園寺幼稚園の、お掃除の時間。
音楽と一緒に、ちびっこたちは
制服の上から遊び着を被って楽しく教室を掃除します。
大人になると面倒になってきてしまうことも、
何でも楽しんで出来るところが、子供たちの凄いところ。
さぁ、そんな子供たちに混ざりながら、ヒーラギくんもエプロン姿に長箒抱えて、
踊り場の掃除です。
例え人相悪けども、
例え頭は銀髪なれど、
ヒーラギくんの本職は執事。
こんな掃除はお手の物です。
静かに家事炊事を見事にこなす、憂いを帯びたこの執事様は、
“一家に1人、ヒーラギくん。”
というキャッチフレーズで、いつの間にか囁かれるようになりました。
(記事:『創刊・執事通信』p.42 とーかC.C.発行)
さてさて、そんなこんななヒーラギくんは、床の升目に沿って身長にあった箒を動かします。
一箇所に集めた埃を捨てようと思ったその時。
ヒーラギくんの視界に小さな手が…。
視線をずらすと、そこには屈んでチリトリを持っている、あのミクちゃん。
止まった箒に、視線をあげてくるミクちゃんは
驚いているヒーラギくんを見上げて、
顔を赤くして、満遍の笑みで照れ笑いをしました。
1番最初にヒーラギ援護団に入ったミクちゃんは、
もうヒーラギくんを怖がることはありません。
少し照れるヒーラギくんと、笑ってるミクちゃんは
そのまま2人でゴミ捨てまで行きました。
お掃除の時間が終われば、その後は自由時間です。
すでに自由時間に入ったクラスもあるようで、
校庭には園児たちが出てきています。
ふたりで教室に帰ろうと歩いていた、そんな時。
「あ!」
と声を出したミクちゃんは、1人の女の子のところへ走っていきました。
それを箒とチリトリ片手に見ているヒーラギくんのところに、
彼女は1人の友達の手を取って戻ってきました。
「せんせー、この子ひろちゃん。仲いいの。」
でかしたミクちゃん!
なんとこの子は援護団メンバー候補も集めてくる、出来た子です。
ヒーラギくんに慣れていない ひろちゃんは
さすがに驚いたのか、あばばばば…!!!といった具合にミクちゃんの後ろに隠れましたが、
「だいじょうぶ。にんげんだよ。」
と、ミクちゃんは友達にナイスなフォローを入れました。
見慣れてきたその子がミクちゃん越しにヒーラギくんを見始めた、ちょうどその時。
ひろちゃんの結んだ髪の毛を引っ張るガキンチョ1名。
「わーい!おさげおさげ〜♪」
結んでいるのだから当たり前だと言わんばっかな事を言ってからかってくるのは、
ちびっこ大将の特徴です。
「わーんっ!いたいいたい〜…っ!!!」
引っ張られている髪の毛の方向に
一緒にテンテケテン…と片足でステップを踏んでしまうひろちゃんを見て、
またまた面白がる男の子。
これは俗に言う、
“好きな子ほどいじめたくなる”
ゆえの行為なのですが、
そんな事は、やられている本人や子供にはわからない行動です。
「おい。嫌がっているだろう…。」
掴まれている髪の毛に気をつけて、
がきんちょ大将のその手を退けるヒーラギくんに
なんと不敵にも、へへん!と笑ってのける少年A!
キリン組の名札をつけてはいますが、
およそ草食動物とは思えない、百獣の王のような態度をします。
紳士な態度で対応したつもりですが、
猶も謝らず、挑発するかのようにニヤニヤしている園児に
もう手加減する必要はありません。
なにせ相手はヒーラギくん。
初日に担当クラスの園児全てに泣かれ、教室で泣き声合唱会を開いた張本人です。
ギン…ッ!!!
そんないじめっこに、
得意の『睨みつける』の攻撃。
これを素で出来ちゃうところが彼の困ったところですが…。
「煤I!!!!
ひぃぃぃぃっ!!!」
「………???」
ものの見事に凍りついた少年Aと、いきなりな少年の青ざめに、意味の分かっていない不思議がる2人。
そんなこんなで慌てて逃げ出すA君が去った後には、
小さな平和が訪れたのでした。
「ありがとう……///」
自分を救ってくれたヒーラギくんに、お礼を言うひろちゃん。
今日は、ひろちゃんという味方をつけたヒーラギくんでした。
その後、廊下ですれ違うたび、ヒーラギくんに怯えながらも挨拶する少年Aの姿が目撃されるようになったとさ。
【fin.】
09'6.20 KAHIME.