松田 隆実:第2章

□親への挨拶と彼女の秘め事
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「**、松田さんいつ頃来れるって言ってたの??」


「仕事終わりだからハッキリとした時間は言えないけど、押してなければ収録そろそろ終わる時間じゃないかな〜??」





今日は隆実さんがうちに来る。


今まで何回か来てたけど、お母さんと顔を合わせるのは今日が初めて。



う〜……。緊張するなぁ……。



隆実さんなら大丈夫だと思うけれど、やっぱり自分の親と会うんだと思うと
緊張する半面、気恥ずかしい…。



「**、もうオーブンいいんじゃないかしら??」


「あ、忘れてたっ!」



ひとり悶々考え込む私に、ママがテーブルの方からオーブンを覗き込む。



隆実さんの部屋では私がご飯を作ることが多かったけど、
今日はママも一緒に夕食を作ってくれた。















《親への挨拶と彼女の秘め事》















「お、真。久しぶりやな。」


6時過ぎてからインターフォンは鳴った。


かしこまってスーツなんか着てきちゃったりするのかな…??


なんて思ってた私の想像とは裏腹に、
隆実さんはいつもどおりのシックでラフな格好だった。


リビングの扉をくぐると、部屋から出てきてたまーくんに声を掛ける。


まーくんとはすでに何回か会っていたから、ふたりはかなり気心知れていた。


隆実さんは、まーくんも何かと可愛がってくれて
自分の弟を、いつも通りあったかく接してくれるのが
すごく嬉しかった。



「**ちゃん…、そういやお母さんは??」


「あ、今ちょっと買い忘れを…。」


言い終わらないうちに玄関のドアが開いた音がして、ママがリビングに入ってくる。



「あら♪こんばんは〜。**の母です。いつも**がお世話になっています〜。」


テレビで見るよりも実物はいいわね♪


と楽しそうに言うママに、隆実さんは笑ってお辞儀をしてくれた。

















「松田さんは、いつこっちにいらしたの〜??」


「上京したんは22の時です。」


「あら〜。じゃあ1人暮らしも長いのねぇ…。」



パパは仕事でどうしても帰って来れず、
夕食はママにまーくん、私と隆実さんの4人で進んだ。


隆実さんは格別自分を着飾るわけでもなく、
普段どおりにママと会話してる。



こうゆう時に、自分を良い風に見せたいとかって見栄を張らずに
ありのままの穏やかに話せる隆実さんが、好きだなぁ…と思った。





「いえ、しばらくは相方と一緒に暮らしてたんで…。」


ママからの質問を返す隆実さんの言葉に思わず反応してしまう。



「え??慎之介さんと…??」


「あぁ、俺と違って、慎は料理得意やで??」


こっちを向いて優しく返してくれる隆実さん。



そっか…。下積み時代って大変って言うもんね…。

そう思うと、私って相当ラッキーだったのかも。



改めて山田さんの仕事における敏腕ぶりを痛感する瞬間だった…。






夕食は、隆実さんが買ってきてくれたケーキを食べて、
楽しい時間はあっと言う間に過ぎた。




















「いいな〜…。慎之介さんは隆実さんと一緒に暮らせて…。」


「そんなん言われても……。」



翌日、仕事が終わってから宇治抹茶の楽屋に立ち寄ると、
そこに隆実さんはいなくて
代わりに慎之介さんが中に招き入れてくれた。



「昨日隆やん**ちゃんのお母さんと会ったんやろ??どうやった〜??」


の問いかけに、昨日の出来事を掻い摘んで話していって、
たどり着いたのが最初の会話。




「隆実さんの好きな料理とかも知ってるんですよね…??」


「まぁなぁ…。」


「いいな〜…。慎之介さんいいな〜…///」



思わず机に伏せて、頭をゴロゴロさせてしまう。



「隆やんは出されたもんは何でも食べるけど、やっぱ基本俺らは京の薄味が好きやなぁ…。」


「“京の薄味”って言うのが、イマイチよく分からないです…。」


「まぁ、せやろなぁ…。こればっかは口で説明するんも…。」


「…………慎之介さんって、人に何か教えるのとか苦手ですか…??」


「いや、そんなことあらへんよ……って…。」



私の意図に気づいたのか、
慎之介さんは変な汗浮かべた後
目を大きく開いて、ギギギとこっちを向いた。




「私に、隆実さんの好きなお料理教えてくれません……??」


「アカンアカンアカン…ッ!これだけはアカンで、**ちゃんっ!
だいたい俺んとこ来てる写真なん週刊誌にでも撮られたら、シャレにならんでっ??!!」


かなり慌てた様子で、ぶんぶか左右に両手を振っている。



「……慎之介さんのマンションて、地下から入ったら外からは見えないって言ってませんでした…??」


「え…っとぉ……。俺そんなん言うたかな〜……。」



とぼけたように視線を明後日の方にやるけれど、完全に目が泳いでる。



「隆実さんの好きなご飯、作ってあげたいだけなんです…。」


「いやぁ〜……、**ちゃんの料理だけでも充分幸せやないかな〜……。」


「地下からだし、別々に入りますから…。」


「あー………、うー………。やっ、でもな……っ?!」


「慎之介さんにしか、聞けないんだもん…。」


「…………………………ホンマに気をつけてな……??」


「わーっ!!!やったぁっ♪ありがとう慎之介さんっ!!!」



妹のように可愛がってる**の頼みを結局断ることが出来ず、
落ち込んでくその様子に、最終的に慎之介が折れたのだった…。



「ホンマにホンマにやで…??」


「はいっ!材料は事前に聞いて買って行きますねっ♪」


「あと隆やんの事で、俺に妬くのだけは堪忍してな……??」


「はーいっ☆」



無邪気に笑ってる**を見て、慎之介は思うのだった。




絶対、隆やんと山田さんにだけはバレたらアカン…っ!



と…。
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