松田 隆実:第2章
□本当は、帰したない。
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「隆実さん隆実さんっ!!!
コレッ!コレ着てくださいっ///」
そう言って、興奮気味にリビングに駆け込んできた**ちゃんは、
両手で広げていたものを嬉しそうに俺に広げた。
キッチンで入れた紅茶をリビングに出してた俺は、
覚えのあるその服に、正直
げ………。
と思うんやった…。
《本当は、帰したない。》
仕事終わりが一緒やった俺ら。
慎と軽い打ち合わせが残っとるのもあって、
**ちゃんが楽屋に寄ってくれた後、3人で俺の部屋に来た。
少し片付けつつ、お茶を入れる俺に
「隆やん、次のロケの台本あるか??」
と聞いてきて、
「部屋の机の上にあるで。」
と返すと、慎に続いて**ちゃんも俺の部屋へ入っていった。
―――――――――――――――
「おー、ホンマ綺麗な部屋やなぁ…。」
机の台本を手に取る慎之介さんは、パラパラとページを捲ってたけど
私を気遣ってか、話を振ってくれた。
「**ちゃん弟さんがおるんやろ??」
「あ、ハイ…。でもこんなに綺麗じゃないですよ??
教科書とか部活のバッグとか散乱してます。」
「中学生なん??」
「はい。疲れてるときは、制服も脱ぎっぱなしだったりしますよ☆」
「制服なぁ…。懐かしいわ。」
「そういえば、慎之介さんたちは制服ってどっちでした??」
「俺らは学ランやったで〜??」
「わー…///見たかったなぁ…♪」
隆実さんの、学ラン姿…。
あのちょっと長めの綺麗な黒髪に、衣装のカラーシャツじゃなくて、白のシャツ。
黒いズボンにベルトをして、そこに黒の学ランを羽織ってる隆実さんの姿が浮かんできて、一気にテンションが
上がってしまう。
学校の木の机に、ノートと教科書を広げて、黒板を見ながら綺麗な指がノートを走って……
時折校庭の方を見て、風で髪が揺れたりする学生時代の隆実さんは、さぞカッコよかったんだと思うと惚けてし
まう。
もっと早く生まれてきて、同じ学校に通いたかったなぁ〜…///
ちょっと夢見がちに走り出した私を見て、慎之介さんは息を漏らして
ふっと笑ってたみたいだった。
「**ちゃん、いいもんあるで〜♪」
「………ハイ??」
想像から戻ってきたときには、慎之介さんは部屋のクローゼットを開けていた。
「……勝手に開けちゃっていいんですか…??」
その背中から、中を覗き込むと
「かまへんかまへん〜、俺と隆やんの仲やからな〜♪」
と、半分歌うようにハンガー掻き分け物色してる。
「あ、あった!
ほい♪隆やんの高校ん時の制服!」
私に差し出されたのは、確かに“松田”と名札のついてる黒の学ラン。
「コントで使ったりしててん。」
腰に手を置きながら説明してくれる慎之介さん。
思わずその制服を抱きしめたくなってしまう。
そんな私の様子を見てか、
「まだ隆やん着れるはずやで〜??」
と教えてくれたのだった。