松田 隆実:第2章
□キミの願いを叶えに…
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「**ちゃんが当てた賞品は〜、遊園地ペアチケット&お食事券でーすっ!!」
俺ら司会のクイズ番組で、**ちゃんが当てた賞品。
スタッフさんからそれを手渡された**ちゃんは、真っ先に俺の元に飛んできた。
年相応の女の子がする、嬉しそぉな満遍な笑みを浮かべて…。
《キミの願いを叶えに…》
「**ちゃん、次はあのジェットコースター乗ろや〜っ♪」
「あ、はーい…!
じゃあ…隆実さん、行ってきます。」
「ほい、いってらっしゃい。」
先を走っていく慎之介さんの後を追いながら、1度振り向く。
隆実さんはそんな私に気づいて、穏やかに手を振ってくれた。
完全な失念。
デビューしたての時、隆実さんが絶叫ダメなところを番組で見たはずなのに…。
その時はまだ出会ってなくて、私も仕事に慣れずにバタバタしてたから、
知ってるはずが頭に残ってはいなかった。
番組が終わった後、真っ先に隆実さんを誘いに行ってしまって、
そして今日、待ち合わせ場所に行けば、隆実さんと一緒に慎之介さんがいたのだった。
「お、こっから隆やん見れるやん。」
乗り物に並ぶ私達がいる階段からは、下の柵に背中をもたれさせてる隆実さんがよく見えた。
連れて来てくれたものの、今日はひとりで待ってて、時々先に乗り物の順番を並んでてくれてる…。
今日は人が多い場所というのもあって、慎之介さんも隆実さんもキャップのついてる帽子を被っていた。
その帽子が上から見つけるのには目立つポイントになっている。
しばらく見ていると、視線に気づいたのか隆実さんがふと上を向いた。
目深に被った帽子を少し上げて、優しく手を振ってくれる隆実さん。
そのサインが妙に心地いい…。
特別な事をしているわけではないのに、様になっているその姿に私の胸はドキンと高鳴った。
「**ちゃん、楽しんどる??」
「あ…、はい。すごく楽しいです!」
楽しいのはホント。
こうやって改めて考えると、いろんな女の人が慎之介さんのことを好きなのがよく分かる…。
さり気ない気遣いとエスコートに、尽きることない面白い話題。
隆実さんにはない魅力を、慎之介さんが持っていて、
慎之介さんにはない魅力を、隆実さんが持っている。
2人とも相手の特性を知っていて、
だからいざと言う時フォローも出来るし、その存在に安心できる。
私は隆実さんにない何かを補える力を持ってるかなぁ…??
むーん…と考えていた時に、並んでた順番が進みだして、その流れに思わずよろめいた。
「ぁ…!」
「おっと……。大丈夫か〜??」
がっちりと支えられた肩。
回された腕から伝わる体温は、私の知らないもの…。
自分の足が地面にしっかり着いた時、
「あっと…、こっから先は約束違反やな…。」
と、慎之介さんの手がパっと離れた。
「ぇ……?」
「こっちの話や〜♪」
肩の高さでそのままヒラヒラと振るその手。
結局その後すぐに順番が来ちゃって、この話題はそこで途切れてしまった。