松田 隆実:第2章

□クピードー
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私の瞳にあなたが特別に映り出したのは、



小さな子をあやして遊んでる、屈託のない笑顔を見たときだった…。




番組で一緒になったチビッ子ちゃん達。




相方の一条さんは、休憩時間も大きなリアクションと動きで体操のお兄さんみたいに子供達の相手をしていたけど、




一緒におもちゃで子供目線で遊んでる人が気になった。





その人の名前は、松田 隆実。





透き通ったような柔らかい笑顔はこの人の心が透けているようで、春の風を連想させて、





その穏やか過ぎる光景に、私はいつの間にか恋をしてた…。

















《クピードー》















「**ちゃん〜っ♪お疲れさん〜っ!!!」



「あ、慎之介さん。お疲れ様でした!」




明るい元気な知ってる声に振り向けば、そこにはよく知る2人の姿。



私よりも背の高い、モデルさんみたいな人たち。



でも、どこか芯が通ってるように見せる才能がある人。



2人が揃って歩いてると、やっぱり華がある…。




ずっと慎之介さんに向けていた視線を、そろ〜…っとその後ろにずらすと、やっぱりいる好きな人。



積極的に話しかけてくれる慎之介さんとは違って、口数が多いわけではない松田さん。




「お疲れさん、**ちゃん。」




でもその優しい声色は、人を心から安心させるような柔らかい温度を持っている。



ドキドキして力の入っていた体も、一瞬肩から力が抜けていくような作用がある。




「お疲れさまです。今日もお世話になりました。」



「はは、俺らは何もしてへんよ。」



見上げた先にある笑顔に、自分の口角が上がったのが分かる…。






松田さんの笑っている顔を見ると、こころに幸せが灯る…。






たくさん話して、その柔らかい笑顔をたくさん見たい。



現に松田さんは、番組収録の休憩中に話しかけるとよく笑ってくれた。



収録スタジオに向かうまでの車の中、今日は何を話そうって会話の内容まで考えたりした。



相手は職業で面白いことを言う人だから、



笑いの沸点高いんじゃないかなって、この話だと笑ってくれるのかなって、



話す内容を脳内で何度も確認する。




でもいつも優しく私の話を聞いてくれて、穏やかな声で相槌を打ってくれて笑ってくれる。



それが最高に幸せだった…。




























「**ちゃんはどれがえぇ??」



「あ、じゃあウーロン茶がいいです。」



「ウーロン茶な。」




いつの間にか続くようになったこの会話…。


場所は収録スタジオの扉を出た、廊下の突き当たりにある自販機。



最初収録の休憩のとき、スタジオを出て行った松田さんを追いかけていった先がここだった。



偶然を装って話しだして、これがいつの間にか繰り返されてる。



2人だと話せるようになってきても、他のスタッフさんがこの自販機に買いに来るとぎこちなく会話は途切れてしまって自然体ではいられなくなるのが今の私の状態。



意味なく視線を手元のウーロン茶に落としてみるも、松田さんはスタッフさん達と“芸能人とスタッフ”っていう壁を作ることなく
敬語で、それでも気さくに話していて改めて素敵な人だなぁ…って思った。








松田さんは、芸能人の色には染まっていない。



気取ることはないのに、実力を備えてる人。



けど、それをわざわざ自慢して見せびらかすようなことはしない。



周りをさりげなく立てて、自分を内に隠すような人。



だから松田さんの人間性は、時間がたたないと本当には分からないんじゃないかって、なんとなく思った…。















「そろそろ収録再開します〜っ!」



休憩を知らせるスタッフさんの声。



「おっと、あっと言う間やな…。」



「はい。松田さんと話していると、時間がたつのが本当に早い。」



「そら、よかったわ。」




ぽむ…。




「………え…??」



「ん?」



「ぁ…、ぃぇ…///」



手が乗ってるって言っちゃったら、もうしてくれなくなるかもと思って勿体無いなくて言えない…。



このままこれが自然な関係になっていけるように手を置いてほしいいじゃない…///



そんな事を考えてたのに、不思議がってた松田さんも気付いたのか手を離して自分の手のひらをキョトンと見てた…。



「あぁ…。堪忍な…。」



がっくし…。



思わず項垂れる私。



松田さんは気にすることなく歩みを変えて、「ほな、行こか。」と歩き出した。



「はぃ…。」




あ〜あ……。私の……ばか///
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