雅季

□彼の指先
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「雅季くんて……、なんて言うか、上手だよね…。
もしかして…私にするのが初めてじゃない、の……??」


「…動かないでよ。」


「や…っ!く、くすぐったいってっ///」


「あのね…。」


雅季くんの長い指が顎を捉える。
少し冷たくて気持ちい指は、そのまま私の後頭部を捉えた。










《彼の指先》









ことの始まりは、1時間前。
自分の部屋で珍しくある雑誌を見ていた私のところに、これまた珍しく雅季くんがやってきた。


いつもは私が雅季くんの部屋を訪ねる側だったから、
こうやってここで2人が一緒にいることはいままでもそう合ったわけではなかった。


「何見てるの??」


「あ、これ…☆なんか、ちょっと憧れるっていうか…、たまには、…やってみたいな〜って…///」


「……ふーん…、こうゆうのに興味持つなんて珍しいね…。
………やってあげようか??」


「えぇ??!!雅季くん出来るのっ??!!」


「このくらいなら、たぶん…。」



少し気恥ずかしそうに本で確認する雅季くんと、少なくとも私が知ってた雅季くんとは違うことに驚く私。


紙面を目で追う雅季くんの表情をこっそり見ながら、自分の鼓動がいつもより早くなってきたことに気付いた。







「……口、少しあけて??」


「ん…///」


ふっと目を開くと、気付けば視線の先には影が落ちていて、
雅季くんが至近距離から真剣な顔で見つめていることに、思わず心臓がドキンと高鳴る。


自分をじっと見ているその視線に捕らわれたかのように、息をすることも忘れてその瞳を見ていると、
口…。と小さくため息をつくように漏れる雅季くんの言葉。


その声が、至近距離の2人の間で篭って、いつもとは違う響きに聞こえた。



その空間が急に気恥ずかしくなって、視線を外して顔を下げると、すっと雅季くんの手が伸びてきて、私の顎を捉えてつっと上げた。


「出来ないでしょ??」


「〜〜〜〜!!!」


予想以上の、とてつもない羞恥心。


雅季くんの指が触れるたびにヒンヤリと気持ちいいことから考えても、相当私の顔は熱くなっているんだと思う。


時折雅季くんが動くたびに、色素の薄い、柔らかい雅季くんの前髪が私のおでこにかかる。



雅季くんの香りと、雅季くんの指と、私の鼓動。


バクバクと言う心臓にもう耐えることが出来なくなった私は、わけが分からなくなって思いっきり目を閉じようとした。



ちょうど、そのとき。





「はい、終わったよ??」


「―――っ/////
………って、ハイ…??」


「出来たって言ったんだけど…??」


そう言って正面を向かされた椅子。


目の前にはドレッサーの鏡に映る私がいて、1時間前とは違う顔で、ぱちくりと私を見ていた。





抑え目に入ったゴールドの入ったファンデーションに、女の子らしいアイメイク。

そして今さっき塗られた、控えめのピンクの口紅…。

それに合わせて、髪の毛もゆるく巻かれている。


ドレッサーの机の上には、さっきまで雅季くんが見ていた、ファッション雑誌のメイク特集のページが開かれていた。




こ、今度からは御堂さんにやってもらお…。
心臓がもたん…/////




とりあえず「ありがとう」と顔を上げると、雅季くんの顔が目の前にあって一瞬が合う。


そしたら雅季くんは、ふっと笑って、そのまま私に影を落とした。


塗ってもらった唇に、雅季くんの唇がゆっくりと触れる。






どのくらいそうしてたか分からなかったけど、
固まった私の意識が流れ出したころ、雅季くんの唇がゆっくりと離れた。



「な……//////」


それ以上声が出なかった私に、雅季くんはどこか悪戯っぽく、それでも優しく笑って言った。


「あれ??そのメイク、僕のためにしてくれたんじゃないの…??」

と。




よくよく見ると、その特集の隅には、“彼がしてもらいたい、彼女のメイクランキング”という文字が入っていた。










【fin.】

08'11.15   KAHIME.


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