雅季

□夜中の休憩タイム
1ページ/1ページ

「あ、頭働かなくなってきた…。」


「もうちょっとでしょ??間違ってないんだから、このページだけ終らせよう。」


「………雅季くん、寝てていいよ…??」


「**が頑張ってて、寝れるわけないでしょ…??」


「うぅ…、申し訳ない…。」




今月末にある、とある試験。


学校で行われるテストとは違って、自分で希望して受けると決めたこの試験は今月末に迫っていた。










《夜中の休憩タイム》











居間にある1つの丸いテーブルに、2人向かい合って参考書とノートを囲む。


今月の追い込みに入ってからは、ほぼ付きっ切りで付き合ってくれるようになった。


専門的な知識は無いにしても、一緒になって考えてくれることが嬉しい。


そしてそれが、大幅にはズレた考え方ではないのも、また雅季くんらしいところだった。




「ん〜……???」


「…どこ??」


うなり声を上げた私の手元を覗き込むように前かがみになった雅季くん。


その拍子に彼の長い足が不意に触れた。



丸いテーブルの下には、雅季くんの長い足が私の足を囲むような位置に投げ出されている。


スタイルのいい、綺麗な顔の男の子が、前かがみになりながら何かを考えるこの構図は
客観的に見たらさぞ絵になっている光景だろう…。




「雅季さま、**さま。お茶をお持ちいたしました。」


軽やかなノックとともに入ってきたのは、お茶を持った御堂さん。


私が試験を受けると知ってから、御堂さんが屋敷にいてくれる時間も少しずつ伸びてきている…。


それでも、それをわざわざ口にすることなく、こうやってさりげない優しさでいてくれるのが御堂さんらしい…。






「**ちゃん!そろそろ休憩の時間かな〜??
お兄ちゃんも一緒に休憩しようと思って〜☆」



居間の扉から、いつもと変わらない明るさで現れた裕次お兄ちゃん。


“経済学の勉強をするから”と、私が試験勉強を始めたのと同時に、一緒に勉強をして起きてくれているのを知っている。



まだ誰にも言ってなかったときに、1番最初に気づいて、
自分の分のついでだから。といつも夜にコーヒーを入れて持ってきてくれたのも裕次お兄ちゃんだった。


読んでたビジネス雑誌にこんな記事が載ってたよ〜と、偶然を装って資料を集めてくれたのも裕次お兄ちゃんらしかった。




「おや…。もうみんなお揃いでしたか…。」


「修一兄さんも仕事ひと段落着いた〜??」


「えぇ、ちょうど切りのいいところまで終りました。」




学校やった方が効率のいい仕事も、わざわざ家に持ち帰って一緒に起きながら仕事をしてくれてる修一お兄ちゃん。



食事以外ではあまり家族との時間も取れなくなった私。


その私のライフスタイルに合わせて、一緒に休憩を取ってくれてる。


本当は片付いてない仕事でも、この時間になると降りてきてくれている…。




瞬くんには、さすがに寝てって言ってるけれど
せめて明るい気分だけでもって、いつもお花を摘んできてくれたり、絵を描いてきてくれたり。


人と付き合うのが苦手な弟が、一生懸命に考えてくれてるのが充分伝わった。





「そういえば、珍しく雅弥が降りてこないね??」


いつも何だかんだ理由をつけて起きてくれてる雅弥くんの姿が見えないことに気づいて
雅季くんが聞けば、


「雅弥は明日試合だそうです。
だから今日は先に寝ると言っていました。」


「そうそう☆
**ちゃんに“シュートで援護射撃してやる”って言ってたよ??」


と、修一お兄ちゃんと裕次お兄ちゃん。




たぶん兄弟の中でこうゆうことが1番不器用な雅弥くん。


でも、雅弥くんらしいその応援の仕方に自分の中で心強さが生まれる。






いままで兄弟のいなかった私。

いまはこんなに自慢できるあったかい兄弟がいる。





その中に好きな人もいて
なんか…あったかい…。





「よっし!そろそろ始めるっ!」


「じゃあお兄ちゃんも部屋に戻ろうなぁ〜☆」


「僕もそろそろ続きを片付けましょうか。」


「お2人とも、あまり無理はなさらないでくださいね??」





部屋を出て行くお兄ちゃんと御堂さん。


その背中を見送って、


机に向き直ると、
そこには、たぶん今の私の心情を受け止めてくれてる、最愛の人。



雅季くんは優しく笑って、参考書の続きのページを開いた。



「じゃあ始めようか…。」






1月も下旬に差し掛かった
西園寺家の物語でしたとさ。











【fin.】

09'01.14   KAHIME.


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ