雅弥

□湯煙の先のドッキリ事件
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「サイテー、雅弥くん…、サイテー…。」


あの惨劇があった後の夕食の席。


俺の前に置かれたのは、ついさっきまで料理に添えられてたろう三つ葉とパセリ……。


まだ半泣き声でブツブツ言ってる**のお陰で、夕食は最期の晩餐のごとく静まり返っていた…。



「そーだよねっ!**ちゃんの裸を見るなんて、男として最低だよねっ!」


あれだけ事故だっつったのに、イジケ半分・怒り半分の**に加えて、
ハナっから**びいきの裕兄は一緒になって俺を攻め立ててくる。



てか、あんだけ走り回った後に葉っぱのみかよ…。



かと言って、こっちも見るもん見ちまった後だけに、事故と言えどもさすがに良心痛む…。


とりあえず白い大皿に申し訳なさげに乗せられたパセリを口に放り込む。



お、バターと醤油の味が…。



てか多分盛り付けられた料理に添えられてただろう葉っぱの向こうに風味を感じながら、
俺は無心にそれを飲み込むんだった…。









「**…。雅弥も大分反省してるんだし…、そろそろ許してあげてもいいんじゃない……??」


隣で青虫のごとく葉っぱを食べ続けていた俺を不憫に思ってか、
はたまた自分の取り皿に乗る料理をジッと見る俺がウザったく思ったのか、
珍しく雅季が助け舟を出してきた。


おっしゃ!よく言った、俺の片割れっ!!!



そんな言葉に、テーブルの下でガッツポーズを握った俺を知ってか知らずか、



「乙女の体を見ることは、大したことないと…??」



底冷えするような低い声が食卓に響く…。







「…………ごめん……。」



雅季、あえなく脱落…。




な、なしゃけねー……!!!!!




でも、この突破口に続かない手はねぇっ!


俺はそのまま1番奥にいる修兄に救いのまなざしを向けた。


その視線に気づいたんか、修兄は気まずげに咳払いした後、



「まぁでも…、終わってしまったことですし…。」



と、あくまでも差しさわりの無い言い方で言葉を紡いだ。


さすがに修兄にはガツンと物を言いづらかったんか、**は黙り込んで……、



動かしていたナイフとフォークをカチャンと置いて下を向いた。




「そうだよね……。どうせ見られても私、ペタンコだし……。そんなペタンコな体見ても、雅弥くんにもメリットないもんね……。」


「いえ……、その………。すいません………。」




あぁあぁあぁぁっ!!!
修兄まで呆気なく落ちたっ!!!




要を見るも、困ったように首を振り、


柊は“我関せず”と言わんばっかに頑な顔して明後日の方を向いてやがる。




ちょ、ちょっと待てっ!!!
いっくらなんでも、こんなんじゃもたねーぞ…っ!!!




「って、こっちは走り回って腹減ってんだぞっ?!
大体、あんなペッタン・ペッタン見て何の得になってるつーんだっ!!!」


「……コジローに餌分けて貰ったら…??」



覚悟を決めて、フォーク片手にテーブルに身を乗り出した俺に、えらく冷たい声が静かに響いて…
料理は俺の目の前から撤去されたのだった…。




ちぎぢょー……。













「えーっと……。
これは…、今日食べても大丈夫だよな…??カボチャって…、生じゃ食えねーのか……??」



結局俺は、誰もいなくなった食堂に忍び込んで、冷蔵庫の中の物色に励んだ。





そんで、その後まもなく西園寺家のバスルームには


“使用中”


の札が取り付けられることになる。




俺の一食分の食事と引き換えに……。










【fin.】

09’02.25   KAHIME.

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