御堂要
□待ってるからね…。
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「うわぁ〜…!たかーいっ!!!」
さっきまでの、僕の人生終った…みたいな暗い表情はどこへやら…。
高い視線から見える世界に嬉しそうな顔。
御堂さんに肩車をされた男の子は、
デパートの天井から下がる広告なんかを触りつつ嬉しそうにはしゃいでいた。
あまりの喜びように、落ちやしないかと隣から思わず手が伸びる私に比べ
御堂さんは慣れたものだった。
「御堂さんって、子供好きですか??」
なんとなく感じたことを口にすると、
隣で御堂さんは少しキョトンとしてる…。
「……そうですね。やっぱり、可愛いと思いますね…。」
「なんか御堂さん、若いお父さんみたいです。」
「…そう、ですか??」
「はい!とってもっ!
子供は何人欲しいとかってありますか??」
「…いえ……その、特には……///」
「たくさん生まれたら、キャッチボールとかしてくれそうですよね、御堂さんてっ♪」
なぜかこのあたりから、主語が私になってきていたのだけども…。
新しい発見と、パパをしている御堂さんが浮かんできていて
私は気に留めることなく話を続けていた。
御堂さんの肩で不思議そうに首をかしげている
男の子に、「ねーっ??」と話を振りながら……。
結局それからしばらくして、男の子の両親は見つかった。
ちょうど2人が会計をしている最中に、キャンペーンの着ぐるみを見つけてフラフラ来ちゃったみたい。
2人してご両親から何度も頭を下げられ、
男の子はご両親の間で「ありがとう!」と大きく手を振ってて、
御堂さんも軽く手を振りながらそれに答えていたのだった…。
「なんかこうしてると、思い出すな〜…☆」
「あぁ、覚えてたんだ。」
「もちろん!要さんとの思い出の場所だもん!」
あれから幾度と迎えたお正月。
私と要さんは、迷子の男の子と出会ったデパートを歩いている。
あの時と同じように、また小さな男の子を間に連れて。
旦那さんの肩ではしゃぐ息子は、容姿こそ要さん似だったけど
性格が私に似てお転婆だった。
数年前憧れたあの光景に、
今は自分がその姿を重ねてる。
それがとっても不思議で、心が温かくなる。
「少し休むか…??」
「ん…。平気…☆」
そして今また、私のお腹には2人目の命が宿っている。
まだまだ小さなその生命。
いつの日か、この世に産声を上げて
私たちの家族になる。
早く、お父さんとお兄ちゃんと一緒に遊ぼうね…。
まだ見ぬわが子に心の中で語りかけて、
ゆっくりとお腹をさする。
それを見て、
「楽しみだな…。」
と優しく笑う要さん。
「うん、早く4人で過ごしたいね…☆
………待ってるからね。」
そう伝えて、息子の足を支えるその腕に、
自分の手をそっと絡めた。
【fin.】
09'01.03 KAHIME.