松田 隆実:第1章
□頑張れ、隆やん!
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「お、**ちゃんやないか。いらっしゃい♪」
次の番組収録まで空いた待ち時間を、俺と隆やんが楽屋で過ごしとると
**ちゃんがひょっこりと顔を出した。
**ちゃんはドラマの撮りで来とったようで、
いつもの雰囲気とは違う衣装を着とった。
「あ、お疲れさまです。」
俺の言葉に返事をしたあと、
**ちゃんは隆やんと目を合わせて、にへら…と笑うた。
隆やんを見ても
なんや、ごっつ優しい顔をしとって
完全に2人の空気が出来上がっとるがな…。
………いいんやで…??
邪魔者は早よう消えたるわ…。
最近仕事がキツぅなってきて、なかなか会えへん2人を邪魔するほど野暮やないで…。
幸いまだ時間もあるし、2人でイチャイチャしとったらええがな。
……まぁ、それが出来たら隆やんも今苦労はしとらんな…。
とりあえず、俺は出番まで外で時間を潰そ思うて
携帯と財布を片手にドアを出て行くところで
とあることを思い出した。
「あ、せやせや、忘れとったわ!」
履きかけてた靴を慌てて脱いで、
俺は持ってきとったバッグの中に入れてきとったものを取り出した。
「隆やん、**ちゃんにプレゼントあげてもええか??」
渡すつもりで持ってきたんやけど、一応隆やんに断りを入れると、
「は…??…いや、べつに構へんけど…。」
と言う答えが返ってきた。
**ちゃんも畳に上がって、首をかしげとる。
「そんなら、ハイ、これプレゼントや♪今度隆やんに連れてってもらい〜??」
そう言って渡したんは、1つの紙袋。
受け取った紙袋の中身を確認した**ちゃんは、
嬉しそうな声を上げた。
「わ…♪
“恋人達の行くデートスポット特集”。
松田さん!いろいろ載ってますよ〜??」
それを聞いた隆やんも、雑誌を広げとる**ちゃんの正面にしゃがみこんで、その記事を一緒に覗きこんどった。
「どうゆう風の吹き回しや…??」
不思議そうに聞いてくる隆やん。
「まっ!おふたりには幸せになってもらいたいっちゅうこっちゃ!」
俺の笑顔に、隆やんは訝しげな顔をしとった。
そこで、パラパラと紙面をめくっとった**ちゃんの手が、
あれ…??と言う声でパタリと止まる。
「折り目がついてる…。」
と、あらかじめ俺が折っとったページの角に指を差し込んで開くと、
それは夜の特集やった。
別にそこまで厭らしないで??
あくまでスポット特集やしな。
ほんでも、
ドカン!ちゅう音でもたったんやないかて思うほど、瞬時に**ちゃんは顔を真っ赤に染めて、
隆やんは俺に掴みかかってきよった。
「おま……/////
慎っ!お前なに考えとんねんっ!!!」
「またまた〜♪そないなこと言うても、どっかで絶対必要になるやんっ☆
いきなり行って、心の準備がまだですぅ〜て、お預けくらいとぉないやろっ??」
「余計なことすんなやアホッ!
これで**ちゃんが変に意識して、構えてもぉたらどないすんねんっ!!!」
「ほぉら、みてみ〜♪
やぁっぱ隆やんも**ちゃんとそないな事したいんやないか〜♪
キャーッ///やっぱ隆やんも男やな〜っ///」
「そないなつもりで言ったんと違うわ!!!自分ええ加減にせえよっ!!!」
俺らがなんやかんや言いあってる間、**ちゃんは完全に固まっとて、
雑誌持ったまま微動だにせんかった…。
先に隆やんがそれに気付いて俺から離れてって、
少し気まずそうに**ちゃんの正面にしゃがみこむ。
「…**ちゃん。
…そんなん気にせんでええねんで……??」
**ちゃんの顔を覗き込むように、
心配そうに大事に気遣っとる姿を横目に、
俺は楽屋の扉を閉めたんやった。
その後どぉなったかは分からへんのやけど、
その後の収録で、珍しく突っ込みとともに飛んできた隆やんの張り手は、
なんや私情入っとるみたいで、ものごっつ痛かったわ……。
隆やん…。
隆やんの担当はボケやで……??(涙)
結局、**ちゃんにあげたあの雑誌は、隆やんが没収したみたいで、
雑巾みたいに絞られて、
隆やんの鞄に無造作に入れられとった…。
【fin.】
08'12.01 KAHIME.