松田 隆実:第2章
□本当は、帰したない。
2ページ/2ページ
お茶を入れて、ちょうど2人を呼ぼうと思うてた時、俺の部屋にいたはずの**ちゃんが目ぇ輝かせて飛んできお
った。
頬っぺた赤ぉして興奮しとるその両手には、
俺の学ランを広げとった…。
「隆実さん隆実さんっ!!!
コレッ!コレ着てくださいっ///」
尻尾振って喜んどる犬のよぉに、ハッハ…ッと希望に満ちた顔は
若干嫌やと言いづらい部分がある…。
その後に部屋から台本片手に出てきた慎に、
いらんことを…。
と視線を送ると、ヤツはヒラヒラと手を振って返すんやった。
「いやぁ〜………。**ちゃん、俺もう28やし…。」
「テレビでは着て出てたんでしょ??」
「家では…、ちょお恥ずかしいわ……。
**ちゃんやって、もう制服なん着ぃへんやろ…??」
「あっ!じゃあ私も着れば着てくれますかっ///??私着ますよっ♪普通に着ますっ!」
「おしいなぁ〜っ!俺の部屋にコントのセーラー服あるんやけど…っ!
あ、取ってこよか??そしたら隆やんも**ちゃんの女子高校生姿見れるで〜??」
「いらんっ///!」
テンション高い**ちゃんと
それを説得する俺と
茶々を入れる慎。
3人それぞれの空気は、熱冷めるまでしばらく続くんやった…。
「さて、送るで**ちゃん。」
てんやわんやな後、落ち着いた2人と夕飯一緒に食べて、
慎は朝一の仕事のため、一足先に自宅へと帰った。
一緒に洗い物を終えた俺は、車のキーを出して声をかけた。
**ちゃんは側まで来て、ギュ…ッと俺のシャツの裾を掴んだ。
「……泊まっちゃ…ダメですか……??」
「今日は帰り??ご両親も心配するで??」
「………最近、お父さんが口出してきて、なかなか休みの日も隆実さんとこ来れないんだもん…。」
「男親なんてそんなもんやろ…??ありきたりな言葉かもしれんけど、子ども扱いされたるのも親孝行のうちや
で??」
「むー………。」
そんな気にされとるんやったら、余計早よ帰さなあかんわ…と思うた俺に、
お父さんの肩もたれたと思うたんか、**ちゃんは珍しく頬っぺた膨らませて、口を尖らせた。
きっと頭では分かってるんやろうけどな…。
とりあえず俺は、その頭にポンと手を置いた。
「それこそ嫁に来たら、なかなか出来んのやから…。
今はちゃんと親孝行しとき??」
それまでずっと下向いとった顔が上がって、俺の視線とかち合う。
「な……??」
もう1度ポンと頭を軽く叩く。
「毎回返さなあかん俺の気持ちもわかってや…。」
「………隆実さんも、寂しいって思うの…??」
「当たり前やろ…。」
「そっか……///じゃあ帰ります。」
「はい、おりこうさん。」
納得したように、照れた顔で頷く**ちゃんの顔は、
笑いながら頬をピンクに染めとるんやった…。
【fin.】
09'06.27 KAHIME.