松田 隆実:第2章
□素肌見せるんは、俺だけにしてや…。
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そしてひと言。
「正直……俺は、出来るなら………。」
「え……??なんでですか……??」
「…**ちゃんは、俺がそんなCMに出てたら………、まぁこれはどうでもえぇか………。」
「???」
珍しく例えを出すのに苦心している隆実さんは、言葉を選んでるようだったけど
「あ〜……。」と唸っては頭をガシガシと掻いていた。
うつむく顔には黒い艶のある長めの髪の毛がかかる。
そしてしばらく停止していた隆実さんが気まずそうに顔を上げると、なぜかその顔はほんのり赤くなっていた。
そして、これまた珍しいことに、手招きされる。
おいでおいで、と。
意味が分からず、座ったまま両手足でパタパタ近づくと、
隆実さんは私の腰を引き寄せて
肩口に顔を埋めてキスをした。
熱い体温が、唇を通じて移ってくる。
いきなりの出来事に背筋がピっと伸びるも、隆実さんは顔を埋めたまま動くこともない。
この状況で伝わるのは、首に吸い付く唇の感覚と煙草の香りのみ…。
ヴァンパイアのような、普段見せない隆実さんにどう動くことも出来ずに硬直していると、
ようやく彼の唇が離れた。
鏡はなくても、キスの感覚からどうなっているかは何となく分かる…。
「…**ちゃんの仕事に俺がとやかく言える権利はないんやけど、
………意志に任せる仕事なら、出来るなら……やらんで欲しい。」
さっきまで唇が触れていた場所にゆっくりと指を置くと、そこはまだ熱を帯びていた。
「**ちゃんの素肌見せるんは………俺だけにしてや……///」
仕事と言うことには人一倍責任感とプロ意識を大切にする彼が見せた、
めったに見せない顔…。
なんでか愛されていると感じるその言葉に、私の体は自然と力が抜けていった。
「はい…///ちゃんと明日断ってきます。」
顔の筋肉が緩んでいるだろう私を見て、隆実さんは「堪忍な……。」と困ったように笑った。
大人な彼がふっと見せた、2人の年齢差を感じさせないことに
なぜか私は、この時安心を覚えたのだった…。
【fin.】
09'08.27 KAHIME.