雅季
□誰よりも…
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雅季くんが学校行事の準備で、なかなか一緒にいれない日が続いて、
久しぶりにデートが出来た、昨日の土曜日…。
気に入って買って、取っておいた新しいスカートとブーツ。
ボブの髪の毛も、時間をかけてヘアピンで纏め上げて、楽しみにしていた。
隣を歩く雅季くんの服が秋服に変わっていて、
制服とは違う、雅季くんらしい服装を見つつ、
幸せに浸って歩いていたのに…。
昼はどこで食べようかという話をしていた私達の前に、
グラマーな外国の女性が道を訪ねてきた。
渡された地図を手元に、方向を確認する雅季くんから私に目線を移した彼女は、
…事もあろうにっ!
私の胸で視線を止めた後、同情するように微笑んだのだったっ!
気付かない雅季くんは、
英語で方向を指しながら道を教えたあと、
私の顔を見て、
………どうかした??と声をかけてきたのだけれど…。
本人に責任の無いことを言っても仕方が無い。
何でもないよっ♪と言おうと顔を上げた私の目の前で、
彼女が濃厚なお礼のキスをかました…。
いや、ほっぺだけど…。
振り向いた雅季くんの
口紅のついたほっぺたを見て…、
なぜか恐竜の鳴き声が脳内で響いて、
それと同時に
私の中で何かがガラガラガラと音を立てて崩れ去っていった。
「だから…その………ごめん…」
自分が悪いわけではないのに、
誠実な雅季くんには、後ろめたさもあるみたいで、
言い訳ひとつせずに謝ってくる。
「次の休日…、**が行きたいって言ってた…オープンカフェに行こう…??
あと…、観たいって言ってた映画も……。」
普段は冷静に何でも言う雅季くんが
一生懸命言葉を紡いでくれてるのを見て………、
自然と私の中の心も静まってきて
気がついたときには、もういいよ…。と言う言葉が出ていた。
「私のほうこそ、ごめんね…??
忙しい中でも、私のこと考えてくれてたの、伝わってたのに…。」
そう言う私の顔を、
雅季くんは、心からほっとした表情で見つめ返した。
「あの〜…、もう大丈夫…??」
いつの間にか1周してて、
頃合いを見計らっていたのか、裕次お兄ちゃんがおずおずと声をかけた。
「うん…ッ☆
もー大丈夫でーすっ!」
マイクを受け取って、
とりあえず別の選曲をして前に出て行く。
「あっ☆雅季くん!私、雅季くんに歌って欲しー曲があるんだけどな〜♪」
「…………なに…??」
「尾崎豊の“I LOVE YOU”〜っ!」
「………。」
結局、雅季くんがそこまでこの曲を知らないこともあって、
帰りにCDショップでアルバムを買ったあと、
家に帰って雅季くんの部屋で一緒に口ずさんだのでした。
【fin.】
08'11.06 KAHIME.