雅季
□ひとつ屋根の下
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「楽しかった〜!」
「他には??」
「感動した!」
「キミの感想はいつも単純…。」
そう言ってふっと笑う雅季くん。
この笑顔が、好き……。
兄弟だった時にも時折見せてくれていた和らいだ表情。
付き合うようになってからは、気づけば会話の中に自然に溶け込んでいるようになってた。
出会った時よりも少し高い位置にある顔が、まだ雅季くんの身長が伸びていることを知らせる。
背が伸びるたびに比例して私のドキドキも高まっていく。
こうゆう時、雅季くんが年上の男の人になっていってる錯角を覚えさせる。
「わ……。」
惚けてた私は前から来た人と肩をぶつけて、珍しくも履いてみた慣れないヒールによろめいた。
並木道の植木にぶつかりそうになったところで隣から肩を引き寄せた大きな手…。
思ったよりも筋肉質な男の人の腕が背中に回る。
見上げれば少し高い位置で
「失礼…。」
と、私を支えつつ、代わりにぶつかった人に謝ってくれている雅季くん。
街のネオンの中で、夜風に髪が揺れてる雅季くんに思わず目を奪われる…。
「キミは本当に目が離せないね。」
「…ずっと見ててもいいんだよ??」
「あのね…。」
「はい、すいません…。」
ドキっとしたことに心が動揺して、返す言葉にも躊躇しちゃう。
表情が強張ってないか、声が裏返らないか、それを心配する神経しか今の私には要領がない。
なんて言うのか…、うん…、いっぱいいっぱいだ…///
上がる口角を見せまいと、黙りこんで伏いた私をチラっと見た雅季くんは、
「僕の前だけにしてよ…??」
と、脈絡のない言葉を1つ。
「???……なにが??」
「……そうゆう顔するのは。」
「うわ…見えた…??///」
「なんとなく分かるよ。」
「雅季くんの前ならいいんだ…??」
雅季くんの前では何を着飾ることもなく私が私のままでいられる。
それが当たり前のように
「そうゆうこと。」
と雅季くんはどこか得意げに微笑んだ。
「私さ…、好きな人には愛情表現強くなってっちゃう方だけど…。」
「なんとか受け止めるよ。」
「そっか………///
最近素っ気なかったから、邪魔だったのかなって思ってた…。」
「…君はさ、もう少し男心をわかったほうがいいと思うよ??」
「……??たとえば…??」
「……好き合ってる男女が、同じ屋根の下で一緒に暮らしてるって現実を…。」
珍しく歯切れ悪く、どことなしか顔を赤らめてる雅季くん。
いつもポーカーフェイスの西園寺家の3男であり生徒会長が、こんな表情を見せてくれるのは私の前でだけって
事が無性に嬉しくて、
私はここぞとばかりに言い切った。
「同じ屋根の下で一緒に暮らしてるんだから、もっとラブラブしないと損なんだよ♪」
【fin.】
’09.09.13 KAHIME.