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□銀魂高校のアイドルU
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始業式を迎えてから早一ヶ月。今は五月の中旬である。
俺こと沖田総悟は珍しく大慌てで朝遅く家を出発して走った。
「っ…はら、へったっ…!」
寝坊した為に何も食べずに走っているので多少クラクラする。最近朝練をサボっているせいもあるだろう。
いつもの様に土方と集合している場所に行ったが…土方の姿はない。
「(…朝っぱらから偉ェなァ。)」
いなくて当然。土方は我が剣道部の副部長である為朝練は欠かさず行っているのだ。
銀魂高校の剣道部は何と言っても功績が素晴らしい。全国大会には毎年当たり前の様に出場し、必ずいい結果を残す。
沖田は去年の全国大会で、二年生にも関わらず果敢にも相手高の三年生を見事打ち取った。そして全国の剣道で名門と呼ばれる私立高校を震え上がらせた。
実際、今でも剣道部内で1番優れているのも沖田である。
部長候補に沖田は入っていたが、協調性や思いやりを持ち、また統率が得意な点を判断したところ、部長は近藤。副部長は土方となった。
「…そーいえば、近藤さんも朝練来た方がいいって言ってたな…」
しかし、朝に弱い俺にとって朝練とは地獄に等しい時間であった。
『朝練開始は6時』と決めた土方を、本当に呪ってやりたいと痛感しながら腕時計をチラ見すると…恐ろしい事になっている。
時計の秒針が…あと180°で朝のSTが始まる時間に達してしまうところまで来ていた。
「…あと30秒…?」
…嘘だろ。もう走っても絶対間に合わねーな。じゃあ敢えてゆっくり行ってやるか。
こういう時に、臨機応変に諦めがつく所が長所じゃねーかな、と思う。
三年生になって初の遅刻だが、別に遅刻しても担任が銀八だ。二年の時は煩ェ担任だったが、今なら構わねェだろ。
俺は、急ぎ足を止めて宣告通りゆっくり歩きだした。