ShortT
□ありがとう
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「あー今日もパチンコ台は機嫌が悪ぃなぁ…」
パチンコから出てきた銀時は顔面蒼白で財布の中身を確認した。
中身は…小銭が少々あるだけでお札は一枚もない。
「あー…つっまんねーな。折角の誕生日なのに」
そう、今日は10月10日…銀時の誕生日である。今年は日曜日だけあってパチンコも盛況の筈だが、運悪く負けたのだ。
「ぱっつぁんは今日顔見てねーし、神楽も定春の散歩行くとか言ってそれっきりだし…薄情者め…」
結局自分は誰にも祝われていないのだ。少し悲しく空を見上げる銀時であった。
重い足取りで進むと、前から黒い影が近付いてきたのが見えた。
「うわ、多串君に沖田君じゃん…」
「うわって何だコラ。あと多串じゃねェ」
「旦那、真っ昼間からパチですかィ。流石は旦那、羨ましい生活してやがらァ」
「それは嫌味ですか沖田君」
誕生日なのに何一つ振られず…それどころか馬鹿にされて余計に落ち込む。
何だよこいつら、何のために出て来たんだよオォ!!
「何だよテメー。何ガン飛ばしてんだマダオが」
「おめぇなぁ…今銀さん傷ついてるワケよ。傷口に砂糖を塗るような事しないでくんない?」
「それをいうなら砂糖じゃなくて塩だ。糖分摂取し過ぎて脳みそまで回ったか」
「ぁんだとマヨラーが。お前アレだろ。毎日マヨネーズ吸ってんだろ?そんなんじゃモテねーぞ」
「大丈夫だ。お前よりは絶対モテる。誕生日の時なんか知らない女から饅頭やら刀の手入れグッズやらもらうからな」
「なっ!そ、んなら俺だってなぁっ…!!」
言いかけて落ち込む。自分にはそんな誕生日を迎えた覚えがない。改めて土方という憎い男のモテ具合を知らされた。
「因みに旦那。俺も誕生日に団子もらいやした」
「うるせエェェ!!何なんだてめー等アァ!!」
沖田もモテるという事実に銀時は涙目になりながらドラマのように素早く去って行った。散々過ぎて嗚咽が出る程泣けてくる。
残された二人は銀時の後ろ姿を見ながら呟いた。
「あーあ…団子をくれたのは女じゃなくて山崎なのになァ。しかも強制」
「そうだったのか?(つか山崎ドンマイだ)」
「土方さんもさっきの話嘘ですよね。有り得ないでさァ」
「いや本当だからァ!!」
「あの…」
自分達とは違う声がし、二人は後ろを見た。
土方はその声を発した人物を認識し、少し目を見開く。
「お前等は…」
「ちょっといいですか?」
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