ShortT

□差
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「ひっじかったさーん」


「あ?」


「遊びましょーぜィ。プロレスごっこで」


「プロレスごっこって、プロレスは遊びじゃねーよ!!……じゃなくて」



そこで土方さんは顔を訝しめた。



「悪ィな、今大量の書類を片付けないといけねーから」



やっぱり…


そう、ここ最近土方さんは俺を相手にしてくれない。


あの書類の1/5(五分の一)は俺かもしれねーが、つーか実際そうなんだが



今まで、遊びに誘ったら嫌々でも付き合ってくれたのに。



「その書類は、今やるしかないんですかィ?」


「いや、今じゃなくても夜片付ければいいが…夜は早く寝てーからな」




……要するに


俺<土方


という不等式が今土方のバカヤローの中に成り立ってるんですねィ。


何かムカつきまさァ


そりゃ自分を大事にすることは大切だけど


女房役の俺をシカトして寝るんですか…?


そりゃねーですよ、土方さん。



「てことで、少しの間山崎とでも買い出し行ってこいよ」



それは、俺が邪魔だから?


土方…


いくら俺の気持ちに気付いてないとはいえ…


凄い辛い


…分かってんだよ


俺達にゃたっけぇ壁がある事なんざ


副長と隊長


年齢の差


性格の違い


身長の差


まだまだ差はあるんだ


だから


俺達にはそれらの差が壁となってる


ベルリンの壁よりなお高い




そんな土方コノヤローと俺が


一緒になれる筈なんてなかったのかもしれねぇ…



「…土方さん、買い出し行ってきまさァ…」


「おぅ、宜しくな」



こっちを向かず、返された答え。



「…こっちがどんな気かも知らないくせに……!」



だから、つい声に出してしまった。




「…え?どうしたん…ていうかオイ!!涙出てンぞ!?」



え、涙…?



いつの間にか涙が出ていたらしい。



「なっ、何でもないでさァ」


「いや…だって珍しいし…どうしたんだ?」



そう言いながら近づいてきて頬を触った。


なんで、そんなに



「さっ、触んじゃねェ!」



やさしくするんでさァ



「いや、だって顔も赤いし…」



嫌だ



これ以上『差』を感じたくない




「…るっせーよ!マヨラーで、目付き悪くてチンピラで、馬鹿でハゲで短足で、性悪な土方バカヤロォォォ!!!」



それだけ叫びながら俺はその部屋を出た。


…後半は、土方とは全く違うことを言った気がする。



「ちょ、お前…何だよコルァァァ!!!」



野郎のツッコミも聞こえたが無視した。


その後、俺は山崎を呼びスーパーに向かった。
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