ShortT

□二人で一人
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昔、俺は子猫を拾った


話し掛けても睨むだけの、目付きの悪い子猫。


その日は雨がザァザァと降っていた為その子猫は全身がずぶ濡れだった



「お前……傘ないの?」


「…………………」



何度声を掛けてもそっぽを向く


一体、誰が飼い主なんだろう…


飼い主はちゃんと最後まで面倒を見るものだろ?



「お前、家は?」


「…家…なんて、ない…」



初めて聞いた、子猫の声。


よく見たら、子猫は左目をケガしていた


何かあったのだろうか?



「お前さァ…目……、」


「…っ!!触るんじゃねェ!!」



…随分と警戒心の強い子猫だろう。


子猫の段階でここまで威嚇出来たら凄いよ…



「俺に…構うなッ………」



子猫は呻き声の様に言う


でも、俺からしたらその行為はただの『強がり』にしか見えなかった



ギロッと睨んだ後、子猫はザァザァと雨に打たれながら歩いた…………が。



「あっ……」



子猫は道路の真ん中で、いきなり倒れてしまったのだ


急いで俺も近寄る



「……風邪、だな……」



子猫の額に触れると、かなり熱かった


…この土砂降りな雨だ。


このままにしておけば、この子猫は死んでしまうかもしれない


俺はその小柄な子猫を抱き抱え、自宅まで連れ帰った



そこから、俺と子猫の長い生活が始まった―――――


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