ShortT

□逃がさねぇ
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薄暗い監禁部屋に鎖で繋がれていて




飯は拳銃持った女がくれる【んまい棒】のみ




人と話したくても、誰も傍にいない




いるのは、監禁部屋の前に立つ見張り2人のみ




体力的にも精神的にも辛く、何度も舌を噛み切ろうとした




でも、そのたびに




死んでいった仲間達の顔を思い出す…




死にたいのに死ねない





逃げたいのに逃げられない




喋りたいのに話す相手がいない





ボーッと考えていると、いきなり見張りが頭を下げた




「おはようございます、また子様」




「あぁ、おはよーッス。」





…おはよう?今は朝か。




窓も付いてないから全然分からねぇや





女は、手にんまい棒を持ちながら何時ものように鉄格子の前に立った





「おーい、沖田総悟。飯っスよ。なんと今日は【マヨネーズ】味…て何ウル目になってんスか。」




「……うるせェ……」




この女も、高杉を尊敬している一人




「…その味の名前…もっかい言ってみろィ…」



「…気付いたんッスか。そうだよ。【マヨネーズ】味。副長…土方十四郎を思い出させるためにわざと買ったんッス…」




高杉のさしがねかィ?




「……んな事しなくても、俺はいつも早く近藤さんや土方さんの所に行きたいって…いつも考えてやす。」



すると、その女は意外そうな顔をした




「アンタ…何で窮地に立たされてそんな事が言える…?」 




「………さァ………」




「…はぁ。やっぱり、私よりアンタの方が魅力的なのかな、晋助様にとっては」






…………え?







「それ、どういう意味…」




「…後で、晋助様が来ると思うッス。アンタをここに閉じ込めたり、アンタだけを殺さなかったりしたのは、全部晋助様の命令」







晋助様……





高杉……




「まぁ、武市先輩と一番精神的にショックを与えるのはマヨネーズだと思ったけど、違ったッスね…。」



そう言いながら、鉄格子の向こう側からんまい棒を投げつけた





「痛………」





「んまい棒が当たった位で痛いとか…どんだけ虚弱なんッスか」




「…はは、自分でも分かるんでさァ。あの戦争の時から…俺の身体は弱ってきてる。」





「…弱ってきてるって分かってんなら、この部屋で筋トレでもしたらどうッスか?何気広いし」




…嘲笑いながら言われる。




「…そんな事したって、一日にたった一食…しかもんまい棒じゃあ、行く末は分かってまさァ」




そうだ




俺はいつか近いうちに死ぬんだ




「…なーにを決め込んでんだか知らないッスけど、晋助様はアンタを殺すつもりは微塵もない」




あのなァ……



その晋助様とやらとは体格も体力も違うんだから、俺がいつ死ぬかなんて分かんねーだろィ…





下を向いた俺に、女は小さい声で





「…ついてきな」




と言った。





俺はとっさに「は?」と漏らしてしまう



でもその瞬間には





『パンッパンッ』




「ぐわああぁ!!!!!」



「ぐっ…乱心したか貴様!!!!」





見張りを銃で撃っていた





「あぁ?うっさいッスよ。この事誰かに話したら射殺だから。」





そう言って監禁部屋の鍵を開けてくれた





まさか………







「逃がしてくれるんですかィ?」




「はぁ?んな訳あるか」





折角の期待を一言で消された…





「違う。今からアンタには30分シャワー浴びてきてもらう。」





…シャワー?





「何でシャワー…」





まぁ、別に身体洗いたいしいいけど…





「……シャワーって…土砂降りの雨の事じゃねぇですかィ?」




「何処まで深読みしてんッスかァ!?このアジトにはちゃんとしたシャワーも付いてるよ」





そうして、シャワーの場所まで案内され、一応身体を洗い流した
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