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□第一回アンケート結果小説
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《土沖》

今日は12月25日。いわばクリスマスだ

世のカップルにとっては最高の日の筈。

でも、俺の恋人は毎日忙しくてクリスマスなんて忘れているだろう

奴もああ見えて副長でィ。クリスマスでもバレンタインでも関係なしに書類と時を過ごす…


でも。


「ひーじかーたさーん」

「おぅ、総悟か」


足取りはいつも土方の部屋。

そして勝手に扉を開けて伺う

土方も決して邪険にはしない


「何やってるんですかィ?」

「穏健派の桂を取り逃がした失敗報告と真撰組強化計画実行報告の書類と年末の宴会予算の件と…」

「…もういいでさァ」


大変なんだなァ、土方も…。

でも、もうちょっと位…俺の相手をしてほしい。

構ってほしい…。


「土方さん。そんなに書類が大事ですか…?」

「まぁ大事っつうか…やらなきゃいけねぇからな」

「俺は…?俺は大事じゃないんですかィ?」


背を向けていた土方は俺の言葉に驚いたのかペンを置いてこっちを向いた


「何だ?今日はやけに積極的じゃねぇか」

「だって…アンタが告っといて俺だけ夢中みたいで…」

「…………はぁ。」


溜息をひとつ吐くと土方はスッと立ち襖を開けた


「…?何してるんです?」

「まぁちょっと待てよ」


ガサゴソと何かを取り出し「あったあった」と呟きながら襖を閉めた

手には綺麗な装飾が施された鞘と真剣がある…


「まさか…」

「あぁ。その通りだ」

「その新品の剣で俺を斬るつもりですか!!?」

「アホ!!これはてめェにやるために買った物だ」

「え……?」


土方はその綺麗な剣を俺に渡し目の前に座った

渡された剣は確かに高価な代物で質もかなりいい


「有名な鍛冶屋に頼んで特注した」

「…土方さん、これ値段…」

「気にすんなよ。お前腕が一流な割には支給された普通の刀使ってんだろ?」

「……でも、」

「何遠慮してんだ。らしくねぇよ?」


そう言って俺の頬をペチッと叩いた

だって、この装飾の所よく見たら金が入ってるんですぜ!?

いくら俺でも遠慮しまさァ!!


「いいんですかィ?」

「…いつも一緒にいてやれねぇから…せめてな…。」

「!!!」


…もしかしてこの剣は土方からの《クリスマスプレゼント》?


「土方さん…」

「とっ、とにかくこれからはそれ扱えよ!!」

「…っ勿論でさァ!」


土方は赤面しながらまた書類の方に向いてしまった

…土方は知ってたんだ。

今日がクリスマスだという事も俺が土方を疑っているという事も。

だから、敢えて土方は行かずに俺が来るのを待ち更にプレゼントまで用意してたんだ…

何か、一時でも土方を疑った自分が情けないでさァ…


「土方さん…実は俺もプレゼントありやす」

「ん?何……っ!!?」


前に回り込み、加えていた煙草をピッと手早く取り、一瞬だけ触れるようなキスをした


「土方さん、大好きでィ…」

来年もまたこんなクリスマスが過ごせますように…。


END
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