明晰夢
□lost memory [完]
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静かに吹く風を身にまかせ、ぼうっと、散った木の葉を眺める。
肌寒い秋の風はまるで僕の背を押すように、今一度強く吹いた。
それがあまりにも辛く、悲しく、身を守るようにひざを抱えてうずくまり、
目元に浮かんだ涙を抑えることもなく嗚咽を噛んだ。
とにかく、どうすればよいのか分からない。
苦しくて、この両足が黒い沼に落ちていくような、そんな錯覚にさえ陥ったのは
僕が弱いからなのだろうか。
この手の中から滑り落ちたものは、いったい何だったのか。
そもそも、この手に何かが乗っていたのかさえも、今の僕には分からない。
「じゃあ、立てば?」
ふと、後ろからの声を聴く。
「立ち上がって、探しにいきなよ。」
巻き上がるような激しい風につられるように振り返ると、そこにいたのは・・・
「君の失った、記憶を探しに・・・」
純白の少女だった。
「lost memory」
―――― 忘れてもいいよ。
私が一緒に思い出してあげるから――――