明晰夢

□白い花  〈完〉
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学校の校門に、彼女はいた。


走ったせいであがった息が、白い気体になり、すぐ消える。



息を整え、そっと彼女の後ろに回りこみ・・・









「風花っ!」



「きゃっ!!」






後ろから抱きつくと、風花の長い髪が小さく揺れた。




「もう・・・。智也、遅い!私、15分もまったんだからっ。」


ここから風花の顔は見えないが、きっと頬を少しふくらまし、背が高めの俺を見上げているに違いない。




「ごめんごめん。っつか、同じ高校なのに下校時間がこんな違うってどうなんだろ。」



風花から離れて、バックの中に押し込んでいたマフラーを引っ張り出す。



「しょうがないんじゃないかな。だって智也は普通科だけど、私は芸能科だもん。それに、たったの15分だしねっ。」




マフラーを俺の手から取り、背伸びして首に巻いてくれた。





「はいっ。じゃー行こうか!今日はどこ行くの?」


「んー、今日は・・・、映画でも見に行こうか。」


「うんっ!」





俺は風花の手を握って、校門をくぐりぬけた。








その瞬間 ――――――・・・










「うわぁ、雪だっ・・・!」





フワリと舞い、現れたのは白く小さな雪だった。


1つ、2つと、いつの間にか目の前は真っ白になって、風花は俺の手をすり抜けて1人前へと進み出る。





「すごいっ、今年初めてよ!」




うわぁ、と、子供じみた声をあげる風花。





今は12月22日。



あと3日でクリスマスだ。






そしてその日は、梅沢 風花 (うめざわ ふうか) の誕生日でもある。




風花と付き合って、もう3年。


毎年雪が彼女の誕生日が近づいているのをつげるのだが・・・





――――― 今年はちょっとおそかったな。





クリスマスと一緒の風花の誕生日。


さてはて、今年は何をあげよう・・・。






「智也ー!早く行こうよー!」






いつの間にか遠くで手を振っている風花に、俺は思わず笑ってしまった。







「今行くっ!」






雪で濡れた地面の上、俺は駆け出した。

































――――― まぁ、プレゼントなんて、また来年でもわたせるし、何でもいいかな・・・、とか思ってしまったんだ。





   だって、そうだろ?




     まだ高2・・・、俺は17歳だし、彼女は16歳だ。









    しかし、3日後。



      俺は後悔することになる・・・    ―――――
    










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