明晰夢
□白い花 〈完〉
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家に帰ったのは、夜の9時近くだった。
玄関に入ったとたん、暖かい空気が体をつつむ。
「ひゃー、髪濡れてやがるッ。」
廊下に上がる前に髪の毛をブンブンふると、頭の上に白いタオルが落ちてきた。
「ん!?あ、姉ちゃん。」
「おぅ!遅かったじゃない、智也。風花ちゃんとデートぉ?」
ポニーテールにジャージという女の子っぽさのカケラもない格好で、俺の姉が立っていた。
しかも、ズボンのジャージをふくらはぎまで捲り上げている。
「・・・風呂上り?」
「ピンポンッ!ほらほら、いつまでそんな所にいる気?ちゃちゃっと濡れた髪ふいて、風呂入っちゃいな。」
ひらりと手を振り立ち去ろうとする姉ちゃんを見て、俺はハッと思いついた。
「姉ちゃん、ちょっと待って!!」
「お?」
急いで靴を脱ぎ、姉ちゃんの腕をつかむ。
すると、その腕は思った以上に温かくて、外がどれだけ寒かったか思い知った。
「女子って・・・、何もらうとうれしい?」
・・・うわぁ。俺、何聞いちゃってんだよ・・・!?
赤面だ。
振り返った姉ちゃんは「何照れてんの。」と、言うように、俺の頭をコツっとたたく。
そして、俺の手をほどいて、
「風呂入ったら、私の部屋にきなよ。」
と、一言だけ言って、2階へ続く階段を登っていった。
「・・・俺、すぐ聞きたかったんだけど・・・。」
部屋に誘ったってことは、話しが長くなるに違いない。
さすが腐っても女子だ。
「・・・9時でも店って開いてんのかな・・・。」
も一度玄関へ向かった、その時・・・
「智也ー!!早く風呂はいんなさーい!!!」
か、母ちゃん・・・!
2階から姉ちゃんの笑う声がする。
「・・・。風呂、入ろ・・・。」
プレゼントは後回しだ。
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