明晰夢

□ブラックひとつ、ミルクを添えて。
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―――――――――――――

「――――で、別れたんだ?」
「うん」
「どのくらい付き合ってたの?」
「えと……い、1ヶ月くらい?」
「へぇ、1ヶ月」

私の目を見ながら、というよりも半ば睨みつけながら、真琴は私の言った「1ヶ月」の単語を繰り返した。
真琴の言いたいことはわかってる。
………また、読まれた。私の目が正直に訴えていることを。

「………1週間です」

「正直でよろしい」

私がたまらず白状すると、真琴はにっこりと微笑んだ。反対に、私はがっくりと頭を落とす。

「……あんた、口で嘘言うのやめな。どうせバレる」
そう言って笑う真琴の声は、とても優しかった。きっと、私が頭を落とす直前に、もう一度私の目を見たのだろう。嘘をつけない、私の目を。
「だ……って、有り得ないじゃん。1週間で振られるとか」

ポタ。

「……っ」

目から涙がこぼれ落ちたことに、少し驚く。
ほら、また。無意識だ。私、「泣け」なんて命令してない。
私の気持ちを綺麗に映し出す、磨きあげられた鏡のようなこの目は、いつだって勝手に、独自の判断で表情を変える。

たとえ私が、それを望んでいなくても。


「許せないね、誰その男。あっちから告ってきたんでしょ?」
「……うん」
「告ってきといて1週間で『別れてくれ』とか、一方的にも程があるよ。そっちの方が有り得ない」
 
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