明晰夢
□コこロ・・・ 〈完〉
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「川野さーん! 大丈夫でしたかー!?」
家から出て灰を落としていた俺に、知り合いの近所のおじさんが近づいてきた。
もう彼女は帰ってしまった。
当然と思う。
「あーあ。跡形も残らなかったなー。 次は何処に住もう・・・。」
そうぼやいた俺。
そんな俺を見て、おじさんは溜息をついた。
「あんたって人は・・・。 もうちょっと悲しんだらどうだい?」
俺は小さく鼻を鳴らし、日の昇りきった青い空を見上げる。
「いいんですよ、あんな家。」
昔から・・・。
そう。 あれを拾った時から、何か不気味な感じがしていた。
見つめられているような、見張られているような・・・。
これでやっと解放される・・・。
あの雨の日に拾った、人形から・・・。
fin...