蒼眼のシリウス
□CHAPTER T
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確か、8年くらい前のことだったかな。
私が、まだ小さかった頃。
戦争が、まだ今よりは酷くなっていなかった頃に
大きな事件が起きた。
ある、有名な研究グループの科学者たちとその家族が
皆揃って自殺してしまう という事件。
自殺した科学者とその家族のほとんどは、それぞれの自宅で発見された。
どの科学者の家からも、飛び散った血痕や自殺に使用した凶器などは見つからなかった。
遺体のすぐ側に、小さなビンが転がっていただけだという。
きっと、独自に自殺用の薬を作って
家族と一緒に飲んだのだろう。
小ビンには、その薬が入っていたに違いない。
しかし。
ある科学者と、その家族だけは
どこを探しても、見つからなかった。
どこか、人知れない場所で
静かに死んでいったのだろうか。
それとも、まだどこかで生きているのだろうか。
事件の後、誰もその科学者一家の姿を目にした者は居ないから
定かではない。
でも、私は。
きっとその人たちは生きている、と
信じている。
そして、
「いつか逢えたらいいな」と
密かに願っているのだ。