蒼眼のシリウス

□CHAPTER T
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昔はきれいであっただろう、深い灰色の汽車。
何度も風雨に晒されてきたためか、とにかく錆が酷かった。
車内の座席のシートも、色あせてボロボロ。
窓を押し上げて開けようとしても、窓枠にガタガタと引っ掛かって簡単には開かない。

しばらく窓と格闘していたが、
ようやく半分開いたところで、あきらめがついた。

ふぅ、と一息つく。


半分開いた窓から吹き込む風が心地よい。

風に優しく頬を撫でられながら、静かに目を瞑った。



これから、父親に会いに行く。
科学者として働いている父に。

……科学者は、今の国にとって必要不可欠な存在。
つまり、戦争に勝つためには絶対に欠けてはならない、特別な存在なのだ。

しかし、これまでに多くの村・街が戦火に包まれ、その犠牲となる科学者が後を絶たなかった。
……このままでは、国の未来が危うい。
そう考えた国は、敵国が攻撃できないような場所に、研究室を新たに建設した。

そのひとつが、父の働く研究室がある場所。


この国には、大きな森林がある。
希少動物が多く生息しているはずだという、国民からの強い主張があり、
何年か前に保護区に指定された。

したがって、他国はこの大森林を攻撃することはできない。



国は、それを利用したのだ。
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