蒼眼のシリウス

□CHAPTER T
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―――――――豊かな自然を持つ街・スイ。

建物は白色や象牙色で統一されていて、いたってシンプルな風景である。
他の村・街よりも空気が澄んでいるように感じるのは、
きっと大森林がすぐ傍にあるからであろう。

何度見ても、美しい風景。
吸い込む度に、生まれ変わったかのように身体が軽くなる、空気。

少女は、この街の全てが好きだった。



いつか、戦争が終わったら。

家族全員で、この街に暮らしたい。

真っ白な家を建てて。

いろいろな花や木を育てながら。

ただ、ただ。



平和に暮らしたい。





―――――「白の路」と呼ばれる、スイ特有の白砂が敷き詰められた路をしばらく歩くと、
思わず目を引く、大きな白い建物があった。

そこが、父の働く研究所である。

少女は、建物と同じ色の大きな門の前に立つ、若い男の門番に話しかけた。

「あの、面会に来ました」

門番は、じろりと少女を見下ろす。

「メンカイ?……あぁ、面会か。じゃあ身分証明書出して」

………何、この門番の態度。
少女はそう思いながらも、黙って上着のポケットから淡い水色の手帳を取り出し、
最初のページにある「身分証明」の欄を開いて門番に渡した。

欄には、自分の名前、国籍、生年月日、血液型、現住所名及び連絡先、両親の名前が書かれていて、
両親からの「自分たちの子供である」という証明の印と、国からの「この国の国民である」という証明の印が押されている。
そして一番上には、自分の顔写真。

門番はふんふんと頷くと、少女に手帳を返した。
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