禁断の果実

□会いたくて、愛したくて
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綺麗に紅葉した中庭を
縁側からぼんやり眺めている彼は、
心に大きな穴があいていた。

敵でもあり、恋人でもあった彼氏が、
主人を裏切り、無謀を起こした。


そんな事をする奴じゃない。

そう思っていたのに、
裏切られ、
逝かれてしまった。


この景色を一緒に見ようと思ったのに…
彼の隣りには誰もいない。

ただ、空しく時間が過ぎて行くばかり。





中庭を強い風が通り抜け、
彼は反射的に目を瞑る。

木の葉たちがざわめき、騒ぎだす。

その中で、
懐かしい、自分を呼ぶ声が聞こえ、
目を開けると、
少し離れた紅葉の下に、
愛しい彼の姿があった。

涙が出そうになるのをグッとこらえ、
立ち上がり、
抱き付こうと、歩み寄る。

だが、それは叶わず、
彼は、煙の様に消えてしまった。


頬を涙が伝い、
視界が歪む。


あの頃は、自分の気持ちに素直になれず、
愛せなかった。

今は、愛したいのに会えないのだ。


会いたい。


会って伝えたい。








「I love you…光秀…」










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