愛桜―アイザクラ―

□第六幕
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「・・・・暇」



今日は巡察も何もない、と言うより強制的に交代させられた。



「山崎ー!!暇ー!!」


「・・・組長、毎回ながら言いますが大人しくしててください。」



薬ここ置いておきますよ、と告げてから即行で部屋から立ち去った山崎。

話相手と言う名の餌食になりたくなかったらしい。



「暇すぎて・・・死ぬ・・・・」


「死ぬんじゃねーぞ髏輝」


「左之さん・・・!」



天使が来た!と襖が開かれた瞬間頬を緩ませるレン。

そんな髏輝が柄にもなく可愛いだなんて思った左之だった。


今日も何だかんだで穏やかな一日が始まる。

・・・・と思う。





















第六幕























「でさー平助がムキになってすっげーマッチョになって新さんのこと背負ってた。」


「なんだそれ、変な夢だな」


「左之さんはやっぱり二人の事近くで見てるだけだったよ。」


「だろうな。俺も一緒になってムキムキになってたら泣いてた。」



縁側に腰掛け足を外に放り投げぶらぶらさせる髏輝。

横顔を覗けば未だに取れない綿紗。


痛々しいそれに思わず顔を歪める左之。

まだ髏輝の頬に張り付いている物をどうしても許せないでいた。



「今日の巡察誰?」


「(・・・・)」


「?左之さん?」


「あ?」


「巡察。俺の代わり誰行ってんの?」


「あー・・・確か土方さんと新八だった気がするな。」


「・・・副長忙しいのに・・・」


「落ち込むことねぇよ。」


「でも、」


「それに巡察から降ろしたのは土方さんだろ?自分の言葉に責任持って代わったんだと思うぞ。だから素直に甘えとけ。それと早く傷治すことだな。」


「・・・・そう、だな。」


「復帰したら頑張ればいいじゃねぇか。」


「うん。」


「・・・・それにしても暇だな。」


「人と話してる時にそれ言う?」


「わりぃわりぃ。けど髏輝と一緒に居るのがつまんねぇんじゃなくてな。新八も巡察だし平助も寝てるしでよ。」


「・・・なら叩き起こせばいい。」



ニヤリと笑った髏輝は肩にかけていた羽織を落ちないように握りながらそっと立ち上がった。



「マジで行く気か?」


「男に二言なし!有言実行!」



最近平助と会ってないんだよ、と洩らした髏輝。

髏輝も一応外出は禁止で屯所内も用が無い限りあんまり出歩かないようにと土方から直々に言われている。

総司も平助も同様。


この前山崎と外出した髏輝だったが無論土方にばれて説教くらったのは言うまでも無い。


総司もちょこちょこ目偸んで外出してるらしいが平助は土方が怖いからと部屋で大人しくしているらしい。



「ねぇ左之さん。」


「なんだ?」


「・・・・・・・ううん、なんでもない。」


「なんだそれ。」



頭の中がごちゃごちゃしてて、色んな葛藤があって。

とりあえず何も言えないくらい複雑だった。


伝えたい事は沢山ある。

だけど伝えるにもこの感情に当てはまる言葉が見付からなくて。


一言でいうならぐちゃぐちゃ。

ただそれだけだった。

やりきれない気持ちが溢れて思わず左之さんの後ろ髪を引っ張った。






(いてぇっつの!)

(うん・・・なんか引っ張りたくなるような髪だった。)

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