愛桜―アイザクラ―

□第二幕
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「髏輝、そろそろ起きなよ。もうすぐ朝ごはんの時間だよ。」


「・・・・・・あぁ??総司か??」


「その人相悪そうな顔止めなよ。今だったらその顔で人二人は殺せるかな。」


「っるせぇ。っつかなんでお前がここにいるんだよ。」


「居ちゃ悪い??」


「・・・・・・着替える、邪魔だ。」


「髏輝の低血圧には毎回困るよ。」



やれやれ、と肩を竦めて部屋から出て行く総司を確認し、髏輝は着替え始めた。

然程時間もかからず襖を開けると総司は随分早いね、と言った。



「別に女じゃねぇんだ。支度に時間なんてかからない。それにもう髪を結わなくて済む。」



まだ眠気が取れてないらしくだるそうに髏輝はぐしゃぐしゃと自分の髪を掻いた。



「髏輝の場合それにかなりの時間かかっちゃうからね。」


「やっぱ切って正解だったな。」


「ねぇ髏輝、今日はいつにも増して着物が乱れてたけど・・・嫌な夢でも見たの?

それにはだけ過ぎててサラシも見えてたけど?寝るときもサラシ巻いてるの??」


「変なとこ見んなよ・・・・。っつか毎日見てるような口振りすんな。それに夢なんか見てない。寝相が悪ぃだけだ。

加えて言えば俺はいつ何があってもいいようにいつでもサラシ着用中だ。」



偉そうに言う髏輝の額を苦笑しながら突く総司。

二人が広間に入ると左之と平助しか居なかった。



「おはよー髏輝、総司!」


「はよ。珍しいな、髏輝と総司が同じ時間に来るなんて。」


「おはよう。二人こそ今日は珍しく早いね。特に平助君。

今日は僕が髏輝の事起してあげたんだ。」



髏輝と総司は比較的早起きだが髏輝はたまに寝坊したりするので起きる時間は毎日バラバラだ。

二人共早いとは言え同じ時間に広間に行くわけじゃないから平助達は珍しいと声をあげた。



「よぉ平助、左之さん。新さんは??」


「今日は朝稽古がないからぐっすり寝てやがる。」


「朝稽古ないといっつもこれだからな、新八っつぁん!」


「・・・・・千鶴も居ないな。それに一が居ないなんてあの人は雨でも降らすつもりかな。」



出来ればやめてもらいたいんだけどな、と髏輝が呟くと襖の開く音が聞こえた。



「その心配はない。俺は既に起きている。」


「あ、一じゃん。顔でも洗ってきたの??」


「あぁ。」


「じゃぁ俺はお先に失礼するわ。皆に謝っといて、一緒に食べれなくてごめん、って。」


「あっ!!髏輝ずりぃ―――って今日は隊士達の様子見に行くんだもんな・・・・頑張れよ!」


「平助に応援されちゃ頑張らないわけにはいかねぇな。」


「あまり無理をされては監視側の俺も困る。」


「監視される側ってなんか変な感覚だな。」


「髏輝はいっつも監視する側だからなぁ。」


「別に千鶴ちゃん一人付き添いが居れば問題ないんじゃない?だから一君は仕事ナシ。よかったね。」


「万が一髏輝が倒れた場合付添い人一人だと誰かを呼びに行かなければならない。その間に髏輝の容態が急変したらどうする。

二人は必要だ。まだ屯所内を把握しきれていない奴に任せたら人を呼ぶときに困る。」


「・・・・俺が倒れること前提なのか。」


「で、その肝心の付き添い人が寝坊ときたもんだ。」



左之は再び苦笑する。

昨日いろんなことがあってとりあえず一段落ついたから安心してぐっすり寝れたんじゃないかと思う。

いくら早起きとは言え全員が揃わなければいけない刻限まであと半刻もない。



「そう言えば髏輝、今日総司に起してもらったんだろ??機嫌悪くなんなかったのか??」


「そんな事あるわけないでしょ、平助君。逆にいつもよりすっごい怖い顔してたよ。」


「はっ?まじ!?俺が起しに行くといっつも布団とか飛んできたりするのに総司の時だけ無害なんだよ〜!ずりぃぞ総司!」


「僕の所為なの?」


「平助は声がデカイから起きたくねぇ。」


「俺の所為かよっ!」


「僕は髏輝のことなら何でも知ってるから髏輝に嫌われるようなことは絶対にしないよ。」


「っていうかさー、そんな無理矢理起さなくていいっつの。起きてこないんだったら放っておいていいから。」


「それは嫌だよ。髏輝が居なくちゃ楽しくないもん。」


「あのねぇ・・・・・、まぁいいや、いただきます。」



パチン、と手を合わせてご飯に手をつけ始めた髏輝。


「僕も先に食べようかな。」


「髏輝だけ一人で食べるのも可哀想だしな。」



そう言って膳の前に座る左之と総司に髏輝は苦笑した。



「いいよ、俺に合わせなくて。一もみんなと一緒に食べていいから。」


「でもよ、髏輝一人にするのは・・・・」


「いいんだって。みんなに迷惑かけたくないから。」


「いただきます。」


「総司?人の話聞いてた?」


「僕は髏輝に合わせてるわけじゃないよ。僕も今食べたいだけ。皆の事待ってられないくらいお腹空いてるんだ。」



「おっ!じゃぁ俺も皆待ってられねぇくらい腹減ってるから食う!!」


「髏輝の監視をしなければいけない。俺もいただこう。」


「一人で食う飯より不味いものはない、って言うしな。」


「はぁ・・・・まぁ、ありがとう。」



呆れて苦笑しながらも嬉しそうに笑う髏輝にその場に居た全員が気にすんなと優しく微笑んだ。






(よぉ平助、左之、総司!)


(あ、遅いよ新八っつぁん!!)


(髏輝と斎藤が居ねぇの珍しいな。)


(あの二人ならとっくに食べ終わって隊士たちの所に行ったよ。)


(なんだと!?俺はいっつも待っててやってるのに・・・・!)


(まぁいいじゃん、今日くらい。)


(お、千鶴やっと起きたか。)


(あ、おはようございます!)


(もう髏輝と一君はとっくに食べ終わって行っちゃったけど??)


(え!?)


(残念千鶴ちゃん。君は部屋で待機だよ。)


(うぅ・・・・・。)







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