愛桜―アイザクラ―
□第三幕
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食後、誰も席を立たずいつもと変わらぬわいわいと騒がしい広間に髏輝も居た。
今日の両隣は左之と斎藤だった為然程騒ぐ事無く平助と新八のやり取りを左之と一緒に聞いていて会話に加わったり笑ったりしていた。
「新八っつぁんひでぇよな!俺がちょっと背が小せぇからって町中でバカ笑いすんだぜ??」
「あれはだなぁ、平助は気がついてなかったかと思うが平助の横を女の人が通った時平助の方がかなり低くて笑っちまっただけだ!!」
「その女の人も少し背が高いんじゃねぇか??」
「大体一寸は違ってたな!!」
「その女の人も大きいな。平助も気にするなよ。まだ成長期なんだろ?」
「自称、な。」
「新八っつぁんなんかすーぐ抜かして上から見下ろしてやるよ!」
「・・・・・そこまで大きくなるかは別だけどな・・・。」
「平助にはわりぃが俺も髏輝と同意見だ。」
「二人共ひでぇ!!」
「てめぇらいい加減騒いでねぇで部屋戻れ!!三馬鹿は書類溜まってんだろうが!!」
土方の雷に三馬鹿基賑やか担当の三人はあ、そうだったっけ??と呟きながら席を立とうとしたため髏輝も丁度いいやと思い一緒に自室に戻ることにした。
「髏輝も戻るのか??」
「あー・・・俺もやんなくちゃいけないことあるしな。」
「なんだ、髏輝も書類溜まってんのか??」
「違うよ新さん。あ、でも提出期限がもうすぐの書類は確かにあるかも。
それに明日出掛けようと思ってね。」
「ふぅん・・・・俺も一緒に行っていいか??」
「明日平助は非番だっけか??」
「おぅ。髏輝は夜担当だよな?」
「そうだよ。じゃぁ昼過ぎに出かけるからちゃんと準備してけよ??」
「あぁ!」
話しながら戸に向かう四人。
戸には髏輝が一番近かったから自然と髏輝が戸を開ける役で髏輝は戸の前で止まり戸を開ける。
・・・・・・・・・筈だった。
【ゴンッ!!!】
『!!?』
「・・・・・・いてぇ」
髏輝が思い切り戸につま先と額をぶつけたのだ。
これには流石の土方と斎藤も驚きを隠せなかったらしく目を見開いていた。
「・・・っぷ!なにやってんだよ髏輝!!」
「おい大丈夫か・・・・??」
髏輝の顔を心配そうに覗きこむ左之に対し平助と新八は腹を抱えて笑い始めた。
「なぁにやってんだよ。」
「大事ないか、髏輝。」
「・・・大丈夫。眠くて視界がぼやけただけだ。」
「そうか。」
「ならいいが・・・・無理すんなよ?」
「分かってますよ。」
額をさすりながら苦笑する髏輝。
あわあわとしている千鶴に髏輝はなんともないから大丈夫、と言い改めて戸を開け自室に戻っていった。
「髏輝もたまにはドジ踏むんだな。」
「いいじゃないですか、そっちの方が可愛げあって。」
「・・・・・まぁな。」
「じゃぁ僕も自室に戻ります。」
「俺もそうしよう。」
皆バラバラと広間を去り広間は静寂を取り戻した。
これが全ての始まり。