戦国BASARA

□欠けた三日月
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―可哀想な人―

その声で目を覚ました。

どうやら忍らしい。

暗殺・・・ってところか。

小十郎も気付かなかったくらいだ。

相当の腕だろう。

だが一向に俺を殺さない。

ばれないように目を閉じているから相手の顔もどこの忍だかもわからねぇ。

分かってるのは女ってことだけ。

このまま斬ってやるのも別に構わない。

でもそう出来ない自分が居た。



「馬鹿みたい。」



そう言って俺の眼帯に触れ眼帯の紐を結った。

驚いて飛び起きそうになったがここで起きたら相手に逃げられると思って抑えた。

もう俺を殺す気が無いのか音も立てずそこに居た。


何をしてるかわからない。


もう帰ったかもしれねぇ。


顔が見たい、そう思った。



何故だか眼帯に触られるのが嫌だとは思わなかった。


誰だかも分からない奴なのに。


そんな事を考えていると隣ですっと立ち上がる音が微かに聞こえた。


ここまで音を立てずに人は行動出来るものなのかと疑うほど無駄に音を立てず女はここを去ろうと立ち上がった。


一目でいいから顔を見たい、そう思った瞬間行動に出てた。


目を開ければ驚いた顔をこっちに向ける女。


掴んだ腕は冷たく細かった。


可愛いと言うより綺麗という言葉のほうがしっくり来る顔。


髪の毛は肩につくくらいの髪の毛で色は漆黒。




見惚れた。



「殺さねぇのか??俺を。」


「・・・それはこっちの台詞だけど。」


「俺はあんたを殺さない。」


「なんで??」


「殺す気がねぇからだ。」


「・・・」


「どこの忍だ??」


「教えない。」


「そうか。」


「離して。」


「【逃がして】じゃねぇのか??」


「別に・・・もう死んでもいいもの。」


「そんな事言うなよ。主人が悲しむぜ??」


「それはないわ。私は忍だもの。」


「忍だからなんだってんだ。」


「私の軍には沢山忍がいる。だったら一人くらい減っても大丈夫なの。」



三日月を背に笑うこいつは綺麗だった。

その笑みは自分を哀れむような顔をしている。



「お前、名前は??」


「離してくれたら教えてあげる。」


「随分上から目線だな。」


「そう言う女、珍しいでしょ??」

「Ha!!確かにな!」


「ユメ。私の名前。」


「It is good name!!」


「そうでしょ?自分でつけたの。」


「Why??」


「自分の名前が嫌いだったから。」


「何で嫌いだったんだ??」


「親が、嫌いだったからその名前も嫌いだったの。」


「そうか・・・」



自然と腕の力を緩めるとユメは変わらず微笑して言った。


その姿が酷く綺麗で何故か悲しかった。




「敵・・・なんだよな。」


「勿論。私は貴方を殺しに来たんだから。」


「何故殺さない。」


「もういいの。私が殺さなくても何れ・・・ね。」


「主人に殺されるってか?」


「えぇ。私の主人は強いもの。」


「主人の名前は?」


「...Sultry person(暑苦しい人)」



そう言ってユメは去っていった。



「・・・真田、幸村・・・。」



武田の所の忍か。

三日月が静かに部屋を照らしていた。

ユメが居た時間が幻だったかのように周りは静かで寂しかった。



「ユメ・・・か。」



眼帯の奥が暖かく感じた。




































欠けた三日月









































その日からユメのことが忘れられなくなった。

心にぽっかりと穴が開いた。

欠けた三日月は満月になろうとその穴を埋める。

俺も穴を埋めるように彼女の元へと馬を走らせた。

向かうは甲斐。









(旦那、伊達軍がこっち向かってきてるけど。)


(何故!?)


(ユメ、なにかやった??)


(殺し損ねただけです)


(結構大きいけどね、そこ。)


(何しに来たんだろうね。)


(ユメに会いに来たんじゃない。)


(冗談やめてください。)


(は、破廉恥でござるぅぅぅぁぁ!!!)


(旦那、お館様に報告してきたよ。)


(承知した!!おぉ館様ぁぁぁぁぁあああ!!!)


(煩い・・・です。)


(・・・・ユメ、本当になにもしてないの??)


(・・・・・はい)


(怪しい・・・・)
















FIN??

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