薄桜鬼
□理想と現実
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理想と現実は違うじゃない。
そう顔を歪めながら、今にも泣き出しそうな顔をしながら言ったユメに否定も出来なかった。
「皆で一緒に刀を持たなくていい時代に生まれたかった。」
今の自分を否定する事になろうとも望んだ理想は現実とはかけ離れていて。
「一が作るご飯を毎日食べて、この手で誰かを殺めることもなくて、毎日平和で毎日皆で散歩してやりたいことやって」
「ユメ。」
「神が居たら私は迷わず怨むわ。どうしてこんな現実を私たちに突きつけたりしたのどうして私たちだけこんな目に遭わせるのどうして私たちなの」
―なんか悪い事、したの?―
いつもなら強気で元気で明るいユメが、泣いた。
人前で泣く事は恥さらしだと何度も涙を内に押さえ込んでいたユメだったが今日は違った。
「ユメ、」
「なに」
少しだけ不機嫌な彼女に声をかける。
眉を寄せた彼女は振り返る。
「確かに俺達は残酷な時代に生まれたかも知れない。時代に巻き込まれたかも知れない。」
「・・・・・」
「大きな幸せなんてこの先一度だってないかも知れない。」
だからこそ
「だからこそ、小さな幸せを見つけるべきだと思うが。」
今を嘆くのは勝手だが今を無駄にすることはよくないと、一は言う。
「私はそんなめでたい頭してないのよ。」
「・・・・・」
「でも、そうしないとこの時代、生きていけないかも知れないね。」
「俺はユメに幸せであってもらいたい。願わくば、俺と。」
思いもよらない言葉に驚くユメをよそに一はユメに近づきユメを腕の中に収めた。
「一?」
感情表現が苦手だと自分でも言っていた一がこんな事を言い出すなんて夢にも思わないユメ。
「今は皆で平和に暮らすことは無理かも知れない。だが、いずれ、と考えていたらその理想も現実になるかも知れない。」
「そう、願ってる。意地悪い総司も、元気な平助も、優しい左之さんも、新八さんも、土方さんも仏頂面の一も、大好きだから。」
仏頂面が気に食わなかったのか少しだけ納得のいかない顔をした一。
「私はみんなと笑うために生まれてきたの、なんて言えたら素敵ね。」
「俺はユメを愛す為に生まれてきた。」
そう言えたら、否、そうだと信じたい。と洩らした一に赤面するユメ。
「とりあえず今を楽しく生きる事が大事、よね。きっとあの賑やか三人は口を揃えてそう言うと思うの。」
今は小さな幸せが、何よりも輝いて見えるの。
大きな幸せはこの時代では容易く崩れてしまうから。
「一は刀を包丁に持ち替えると良いわ。」
「俺に武の道をやめろと」
「その代わりに私が組長やってあげる。」
「一番仕事のしない隊になりそうだから遠慮しておく。」
「総司が居る限りそれはないから安心して」
「・・・・確かにそうかもな。」
「そろそろ夕餉の時間かしら?行ってみる?」
「そうだな。」
そっと繋いだ手から伝わる体温は温かく、優しいものだった。
理想と現実
こんな時代だから言うね、私の理想が後何年かかっても良いから、いつか、いつか現実になりますように。
いつまでも隣に一は居ますように。
そう願わずには居られないのよ。
彼女の願いが叶ったのはずっとずっと先の話。
「ユメ、起きろ。帰るぞ。」
「あれ、一?部活はどうしたの??」
「とっくに終わった。」
「え!?じゃぁ・・・・今・・・」
「7時だ。」
「うそ、私そんな時間まで寝てたの!?」
見回りの先生ちゃんと仕事してるのかな?
「・・・・いつも待たせてすまない。」
「ううん!私が好きで待ってるからいいの。それよりね、一、私最近同じ夢ばかり見るの。」
「?」
「剣道部の皆と一緒に暮らしてる夢。だけどその時代は争いが絶えなくて皆刀を持ってた。」
「・・・・・」
「でもね、皆と一緒に居るの、すっごく楽しいみたい。でね、いつか、平和に暮らせたらいいね、って一に言うの。」
「そうか。」
「ありがとね、一。」
何に対してのありがとうなのか分からなかったがその時のユメの笑顔は昔と全く変わらなかった。
FIN
アトガキ
12345hitまたた様リクの一さん夢
薄桜鬼初めての短編でございます!
記念すべき短編がこんな駄文・・・
しかもリクエスト夢・・・またた様申し訳ないorz
書いてみての感想
スランプって怖い^p^←
遅くなって申し訳ありませんでした><