薄桜鬼

□耳を揺らすアルト
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「平助」


「んー・・・・ユメ?」


「そうだよ。眠そうだね。」


「うん・・・・超眠い・・・。」


「置いてっちゃうよ?」


「ダメ、無理。」


「じゃぁ早く起きてー」


「うーん・・・あと少しダメ?」


「ダーメ!」



もう、知らない。と言って彼女はベットから離れてしまった。

沈んでいたベットの端っこが反発した。


まだ完全に覚めてない目を閉じないように努力しながら部屋を見合わす。

ユメはお気に入りのソファに腰掛けてテレビを見てる。


今日は休日だからゆっくりしたいのが本音なんだけどなぁ。



「今日出かける予定あったっけ・・・?」


「平助は知らないけど私は出かけることになったの。」


「ことになった?」


「左之さんに会ってくる」


「はぁ!?」



ガバッと勢い良く上体を起こす。

だけどユメは特に驚いたような仕草もせず「なに?」なんて返してきた。



「なにって・・・左之さん・・・なんで?」


「いろいろ。」



こんなに堂々と浮気・・・なんてことはない・・・ハズ。

いや、でもユメの性格なら考えられなくも・・・ないかも知れない。



「(取りあえず落ち着け俺・・・)」


「言っておくけど浮気とかそういうんじゃないからね。」



年上苦手だし。とサラッと言いのけたユメは俺の2つ下だ。

言えば社内でもユメは俺の後輩だ。

即ち俺の事は年上だとも思ってないのかそうか。



「多分夕方までには帰って来るから。」


「だから、」


「じゃぁ行って来ます」


「ちょ、」



さっさと出て行ったユメ。

おいおい、何がどうなってるか理解できない。

先ずはこの状況を誰か教えてくれよ。



「もー・・・左之さん・・・・・。」



携帯を取り出して急いで左之さんに電話すると向こうはいつもの明るいバカっぽい声で電話にでた。



「ちょっと左之さん!?今日ユメと出かけるんだって!?」


「あー?平助か。おぉ。今迎えに行くとこ。」


「どういうこと!?」


「気にすんな!今日はユメからの誘いだからな。断るわけにもいかねぇ訳だよ。」


「なんだよ、それ。」


「大丈夫だ!ユメは俺なんかに興味ねぇし、俺もかみさん一筋だからよ。」


「まぁバカ夫婦加減は知ってるけどさー」


「心配すんな平助!夕方までには返すから、な?」



な?って言われてもなぁ・・・仮にも(?)ユメは俺の奥さんなわけで。

返す、って・・・自分の奥さんをほんと借"物"みたいな扱いされて気分は極限に複雑。



「んー・・・まぁユメが左之さんをご指名だから何もいえないけどさー」


「ユメだって今日本当は平助と一緒にゆっくりしたかったらしいぞ?」


「ほんとー?」


「まじで。」


「それならいいけど・・・。」


「お、ユメ発見。じゃぁ有意義に過ごせよ!平助。」



そう言って左之さんは一方的に電話を切った。



「・・・・・なんだかなぁ。」



まぁ・・・ユメが楽しんでくればそれでいいか、なんて最終的に考える俺はやっぱりユメにベタ惚れだ。



「(って言うかすることねぇー・・・)」



久し振りの休日で、いつもだったら会社でバリバリ働いてるのに!

久し振りすぎて逆になにしたらいいか分からなくなる。

否、なった、か。


どうすっかなーなんて考えながらユメが何十分前に座っていたソファに腰掛ける。



「(とりあえずDVD見てーパソコンいじってーゲームやってー・・・)」



ふと隣を見るとソファが丁度1人分スペースがある。

試しに寝転がってみる。

寝転がっても俺の身長じゃぎりぎり埋まるくらい。


左之さんとかが寝転がれば足がいい感じにはみ出すんだろうなーなんて思ってまた起き上がる。

やっぱり一人分空くのが寂しいな、なんて思った。

きっと空いているこのソファも寂しいんだおろうな、とも思った。


でも寝転がっても彼女の居場所は埋まらない。

こんなに愛しい存在だったんだ、痛感。


世界で一番ユメの事を愛してるのは俺だ!って言いたいところだけどユメの両親も負けないくらいユメバカだ。

でも仮にも俺が一番だったとしよう。

おこがましいかも知れないけど。


そう、ユメの事を一番愛してる。でも、再確認させられた。

俺がユメの事好きなんじゃなくて、俺はユメが居なくちゃダメなんだ。

ユメ中毒だ。


自分で言ったって納得。他人に言われたらうん、って頷くしかないなぁ。



「だめだ・・・やることないから頭おかしくなってきた・・・」



とりあえず、DVDだ。

ユメと一緒に見るはずだったDVD。

でも結局俺とユメの予定が合わず待ちきれなかったユメが先に見たやつ。


あんまり興味なかったけど家に帰ってきたらあのユメがいきなり泣いてたからちょっと興味が湧いた。

ユメは映画に関しては案外ミーハーなところがある。

お陰でユメの部屋は映画館か、っていうくらいDVDが並んでる。


趣味が映画鑑賞とかDVD鑑賞?一筋ならまだいい。


だけどユメの場合多趣味だから色んな方向に散らばってる。



最近なんか合気道がやりたいとかいい初めたり、自分でブレンドしたコーヒーが飲みたいとかいい始めたり。

かと思えばビリヤードとかにはまったり。

傾向が全く読めない。


それに何だかんだ言って結局は付き合う俺もどうかしてるけど。

詰る所俺もユメのお父さんお母さんに負けないくらいユメバカってこと。













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