薄桜鬼

□赤の冬
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「あ、雪だ。」



寒いなーと思って起きれば空からは雪がパラパラと降りてきていた。

もうそんな時期かぁ、なんて呑気に考えていたが寒さが半端なくて布団から出たくなくなった。



「・・・・遊びたい・・・けど寒い・・・。」



まだ京の寒さには慣れてない。

どっちかって言うと江戸の方が寒かったかも知れないけど年々冬って言う季節の気温が下がってきた気がする。


比較的上のほうよりは暖かいはずなのにかなり寒い。



「・・・・・積もってるな。」



布団を引きずりながら縁側に出る。

地面にはやっぱり雪が敷き詰められていた。



「さみぃーなぁ・・・」



でもちょっと雪には興味がある。

そう言えば今日が初雪か、なんて思いながら縁側に布団を肩にかけながら座る。


届く範囲の地面に手を伸ばしてそっと雪に触れてみる。



「冷たっ!」



あまりの冷たさに驚いて咄嗟に雪を離してしまった。



「(侮れないな・・・久し振りだからって油断した・・・・)」



意を決してもう一度雪に触れるユメ。

今度は雪を落とさず握ったまま何を作ろうか、考える。



「(雪ウサギ・・・いや、そんな高度なもの作れないぞ・・。雪達磨?)」



丸二個作ればいい感じだし雪達磨のほうが簡単だな、と思って作り始めたのはいいものの

如何せん不器用な為中々形のいい丸が作れなくてどんどん大きくなっていく。



「おっかしいなー・・・」


「よぉユメ。」


「あ、永倉組長!」


「なにやってんだよお前・・寒くねぇのか??」


「いや、寒いですよー。でも雪見ると遊びたくなるじゃないですか。」


「なんねぇよ。さみぃだけだ。」


「そりゃ組長の格好じゃ誰だって寒いですよ。」


「あー・・・俺の羽織知らねぇ?」


「えーなくしたんですか?」


「いや、部屋に置いたはずだったんだけどな。」


「島原に忘れてきたんじゃないですか?」


「・・・・・いや!それはないな。断じて!!」


「どーだか。」


「まぁ見つけたら教えてくれ。」


「はいはーい。」



そう言えば今日永倉組長の隊が巡察だったなーなんて思いながら手を動かし始める。

今日は特に出さなきゃいけない書類もないし仕事もないから我隊は全員休みだ。


この静けさからすると皆各々どこかに遊びに行ってるらしい。


こんな寒い中外に出るなんて考えられない。

寧ろ考えたくも無い。


今日が巡察の日じゃなくてよかったと心底思う。



「おい、ユメ。」


「あ、原田組長じゃないですか。」


「お前・・・布団を引きずってなにやってんだよ。」


「見ればわかるじゃないですかー雪達磨作ってるんですよ。」


「布団から出てやれよ。」


「無理です。布団から出たら寒くて死んじゃいますよー」


「大丈夫だ、俺だってこんな格好してるが死んでねぇ・・・ぞ!!」


「ぎゃぁああああ!!」




あろう事か原田組長は私の布団を勢いよく剥ぎ取った。

一気に体が外気に触れて冷え始める。


鳥肌が一斉に体に立って本当にただ寒いとか、死にそうとかしか頭に浮かばない。



「組長ふざけないでくださいよ!本当に死んじゃいますー!!」


「慣れれば大丈夫だ。慣れとかなきゃいざという時動けねぇぞ。」


「それはごもっともな意見ですが・・・!布団は返してください!」


「だめだ。今日夜の巡査担当になった。」


「え」


「平助が風邪引きやがった。」


「藤堂組長・・・」


「まぁ平助にも悪気はねぇからよ。」


「藤堂組長のところの隊士を連れて原田組長が行けばいいんですよ。私言い考えじゃありません!?」


「おまっ、殺生な事言うな!お前等全員道連れだ。」


「ふざけないでくださーい」



おりゃ!と藤堂組長への恨みもこめて大事に作っていた雪達磨の頭を原田組長に投げつけた。



「うおっ!!」


「寒くて手が悴んで組長のこと斬っちゃうかも知れませんがそれは愛嬌ってことで。」


「愛嬌で済まされねぇっての。」


「もー・・・今度なんか奢ってくださいよー?」


「おう。分かったって。」


「それと布団も返してください。」


「あーあ、手ぇ真っ赤だぞ。」


「!」



ぎゅ、って握られたてからは原田組長の手の温度が伝わってきた。



「っ冷た・・・。霜焼けになるぞ?」


「・・・・・・」


「おい、ユメ?」


「・・・・・・・・・」


「怒ってんのか?悪かったって。」


「ぁ・・・いや、そうじゃ、ないんです。」


「あ?」


「な、なんでもないです!」


「なんだ、照れて「ないです」」


「つまんねぇな。」


「なっ・・・つまんないってなんですか!って言うか手離してくださいよ。」


「お前、寒がりだっけか?」


「まぁ・・・どちらかと言うと。」


「そうか。」


「原田組長は温かそうですね。髪といい・・・」


「ん?あぁ、そうだな。自分ではあんま見えねぇから何とも言えねぇけど。」


「男の人って温かいもんですか?」


「さぁ?男の手なんて握らねぇからなぁ。」


「・・・・そう、ですか。」


「おい、意外そうな顔すんじゃねぇ。」


「だって・・・」


「だっても何もねぇよ。誤解するようなこと言うな。」


「じゃぁ女性の手だったら握るんですか?」


「・・・・・。」



本当に好奇心からくる他意のない純粋な質問だった。

原田組長は女遊びが永倉組長と並んですごいし。


島原でよく遊んでくるし。

やっぱ島原だから当然遊女だって居るわけで。



「他意はないですよ?ただ純粋に気になっただけですから。」


「後付けは案外イタいな・・・・」


「?」


「そこは期待させといてくれよ。」


「・・・?ごめんなさい?」


「まぁ、いい。よし、よく聞けよ?」


「はぁ・・・。」


「俺は遊女には手ぇださねぇよ。」



するっと離された手。

体と同じでいきなりぬくもりがなくなりすぅっと冷気に触れ、つい体が震える。


ぽん、と温かい手が頭に乗っけられ何だか凄く心地が良かった。



「猫」


「?」


「猫、みたいだな。」


「そんなことないですよ。」


「いや、そんな事なくないな。」


「それじゃぁ私が気紛れで、寝てるかどこかに行ってるかしかないみたいじゃないですか。」



むすっ、と頬を膨らませればぷすりと組長に頬を突かれ空気が抜ける。

原田組長はそれを面白そうに笑った。



「まぁ遊ぶも寝るも好きにすりゃいいが風邪だけは引くなよ。」


「隊務に支障が出ないようにはしますよ?迷惑かけられませんし。」


「ばーか。そうじゃねぇよ。」


「はい?」


「わかんなくていい。」



いつか、な。と言って布団を渡された。

両腕で受け取ると同時に背中に何かがかけられた。



「縁側に居るなら貸しといてやるから布団はやめろ。」



な?って言いながらまた頭を撫でられる。

背中からはみ出したソレは綺麗な緋色をしていてその羽織はまさに原田組長その人を連想させる色。



「・・・組長羽織なんて持ってたんですね。」


「全然使わないけどな。」



汚すなよ?と言いながら額に口付けを落とされた。


一瞬何が起きたんだか全く理解できずにポカンとしてると原田組長は笑って

来た道を戻っていった。


きっと私の顔はこの緋色に負けないくらい真っ赤だろう。

































































(背にかかった緋色の羽織をギュッと握ると

ふわりと原田組長の香の香りがした。)



FIN

10.11.06




ハロウィンイベントリク夢で
お相手は左之さんでした!

ハロウィン夢にしようかどうしようか
迷ったんですがこの先何本かリクされてるんで
全部ハロウィンじゃきっと
ネタがなくなるだろうと思い、

普通の夢にさせていただきました←

ハロウィンの意味^p^


英利奈様リクエストありがとうございました!




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