薄桜鬼
□君の瞳に涙は要らない
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「私、沖田さんのことが好きなんです」
あぁなんてタイミングで来ちゃったんだろう。
風紀委員の放課後の校内見回り。
今週の当番は私のクラス。
学校に用がなく無断で残ってる生徒や許可なく教室に留まってたり、まぁこんな感じの気まずい場面であったりアハーンな行動も下校時間なので、と止めなくてはならないらしい。
風紀委員担当の先生はさらりとそんなことを言ってのけるが
流石にアハーンな最中(かなり下品だが)に堂々と注意できるわけがない。
だったら先生が一人で止めてくれよ、と思いつつ毎日何事も無いようにと願いながら見回りをしてきた。
その願いが通じたのかこの一週間何事もなく無事に過ぎていった。
今日までは。
今、俗に言う"なう"で事件が起きている。
スルーしても当然何ら問題はない。
彼女ら、名前を挙げれば雪村千鶴と沖田総司は剣道部に所属していて
実際には雪村千鶴は剣道部マネだが今日も剣道部はしっかり活動している。
適当に理由をつければ教室には残れる。
過ぎ去りたい気持ちも勿論あるが少しだけ、本当に少しだけ沖田総司の返事が気になった。
前々から二人の関係は噂されていた。
私と総司が付き合ってる頃から。
所謂総司は私の元カレポジション。
私との関係が終わって2ヶ月。
今となっては昔の話でお互い何もなかったかのように生活してる。
「(まぁ別れ話を切り出したのは他でもなく私んなんだけど。)」
いつからだったろう。
総司と千鶴ちゃんの関係が噂され始めて私が皆から可哀想な存在として見られ始めたのは。
千鶴ちゃんに総司を取られた、と言うより総司が私から離れていった、と言った方がしっくり来た。
負け惜しみ、とかそう言う風に聞こえるかも知れないけど。
別れ話をしても彼は表情一つ変えずにいいよ。とだけ言って私との関係を簡単に断ち切った。
クラスも違うから全然話さないし会うこともなかった。
まだすきなの?と聞かれたらまだ想ってるのかも知れない。
だけど確信はなくて。
「・・・・ありがとう。」
総司が静かにそう告げた。
これ以上聞いたって自分が惨めになるだけだと思ったから足早にその教室の前を通りすぎた。
これ以上は、聞けない。
私と総司はもう終わった関係だから、私には関係ない。